噂話
とある女の子ととある悪魔が出会うまで 二話
お昼も食べ終わって今は昼休みだ。相変わらず外国人さんは小鳥遊くんの側にいる。なんで小鳥遊くんなんだろうか。
そういえば、お昼の時はいなかったな…あたし達と一緒でご飯でも食べてたのかな。
なんてお花畑な頭で考え事をしていると
「ひかる、廊下行こうぜ」
「ん」
誠くんがそう小鳥遊くんに話し掛けると、2人はガタリと音を立ててそのまま廊下に向かっていった。勿論そこにいた外国人さんも一緒にだ。
廊下に出る扉の近くの席にいるあたしはこっちに向かってくる2人を気にされない程度に見送った。
…2人は見送った。そう、2人は。
あたしは見送った後のやり場のない目を必死に机のプリントに固定させる。いや、やり場はあるんだけどそこにやったら確実に不味い気がするのだ。
見られている。外国人さんに。
そのまま2人に着いていくのかなと思ったらあたしの斜め左後ろでピタリと立ち止まって、しかも目の前に移動して来たのだ。
(なんというしゅらば)
あたしの頭ではこの場をどう切り抜けていいのかわからない。ただ時間が解決してくれるのを待つだけだ。
「こんにちは」
ウオォーッ!??!!
遂に直接話し掛けて来ただと!?!ななななんという!!
だが焦りを顔に出してはいけない。ふぅ…
我ながら落ち着いてると思う(落ち着いてない)
「…」
「……」
外国人さんはしゃがんであたしと目線を合わせてきた。…遠くだとよく見えなかったけど凄い顔整ってるなこのお化け…幽霊…悪魔?
ついつい見てしまいそうになる衝動を抑えてあたしは無視を決め込んだ。
(気付かないフリ…あたしは何も見てませーん…)
「ねぇ」
(……)
「……」
おや…?
外国人さんはすくと立ち上がってあたしの机から離れていき、そのまま廊下に出てってしまった。
ヒューっ危なかった!よくやったゆめみ!あのまま返答してたら絶対何かよくないことが起こってたよ。
「はぁ…」
ほっとしたらなんだか急に疲れてしまった。もう今日はこのまま何もない日であってほひい。
キーンコーン
「んあ」
いつのまにかこんなに時間が経っていたのか、お昼休みが終わってしまった。
外に出ていた生徒達はぞろぞろと教室に戻ってくる、勿論小鳥遊くん達もだ。
「…」
「…ん?」
今一瞬小鳥遊くんに見られていた気がする。
こんなあたしよりも良い人がいるよ…
そのままあたしは5時間目の授業を受け始めたのだった。
…
その後下校の時間になるまでずっとあの外国人さんはそこにいた。消える気配は全くなさそうだ。
あたしは鞄に荷物を入れて友達たちに挨拶をしそのまま教室を出た。
「なぁ」
「ん?」
出ようとした所を誰かに止められる。聞き慣れない声、あまり喋ったことのない声だった。なあにと返事をしようと振り返ると、そこには噂の小鳥遊くんがいた。近くで見るとよりその顔の良さ?がわかる気がする。
「なに?」
「あ、いや…名前なんだっけ」
「三並河」
「三並河、一緒に玄関まで行こうぜ」
「!?」
急な恋愛シミュレーションみたいな発言にあたしは少しパニックになる。他に良い子いるでしょ!!
自分の発言の唐突さに気付いたのか、小鳥遊くんは吃りながらも言葉を修正していく。
「そ、そういう意味じゃなくて…お前と話がしたいんだよ」
「話ぃ?」
「おう」
まあいいけど。なんであたしとなんだろうか。そんなことを気にしながらあたしは小鳥遊くんと並んで階段を降りる。
「…三並河ってさ、幽霊とか見えるタイプ?」
「えっ?」
偶然か、はたまた必然か。今日の出来事もあってかあたしは声が裏返る。オカルトとかホラーが好きなのかな…
とにかくあたしは今日の自分を否定するように嘘をつく。
「うーん、見えないかな…子供の頃からぜーんぜん」
「そうかーそりゃ残念…」
たったこれだけの会話でも終わる頃にはもう玄関だった。
靴を履き替えて外に出る。
「じゃあ、また明日」
「うん、ばいばーい」
逆方向に歩いていく小鳥遊くんに手を振りながら、あたしは挨拶をした。なんであんなこと聞いたんだろう?
帰り道、あたしはなんだか道路をいつもより長く歩いている気がした。
「……」
もしあれがお化けだとしたら…学校の噂も本当になるよね、なんて。
わざわざ自分から怖がるような発想をする。
「ん?」
ピタ、と足を止める。十字に別れた左の道の先を見て見ると、背の長い女性が立っていた。
…いや、普通前を立っててもこんな注目しないし、そもそも真っ直ぐ前見て歩き続けるはず。何故だかその女性から目が離せない。
「あっ」
暫くして忘れてたように瞬きをすると、その女性はいつのまにか消えていた。…幻覚にしてはハッキリ見えてた気がする。外国人さんしかり。
「気にしないでおこう…」
一番したくない考えをしないようにそそくさとその場からあたしは退散した
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