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噂話
一話

春の暖かい風が吹き、肌を撫でる。

今日、俺は新しい学校に転入することになった。理由は前の学校でいじめの様な事ををされていたから、だそうだ。

正直そんなことはどうでもいい。
俺はこの学校で中学校生活をやり直したいと思っている。
自分の好きなことはもちろん。新しい友達も作って充実した毎日を過ごしたいんだ。

頭の中での想像は終わりにして、目の前のドアに手を掛ける。

「では、転入生を紹介します。小鳥遊くん、中に入って来てください。」

その声を合図に俺はドアを開け、教室に一歩一歩踏み出す。

「今日からこのクラスの新しい仲間です!さあ小鳥遊くん、自己紹介をしてください。」

少し嬉しそうな先生の声。少しめんどくさい。

「小鳥遊 ひかるです。よろしくお願いします。」

それだけ口に出し、空いている席を探す。
見つけた。
一つだけ空いている席。それは一番後ろで窓際の先生の目が丁度届かなさそうな場所にあった。良い席だ。
先生が指を差す前にスタスタと空席へ向かい、荷物を下ろした。
先生は少し戸惑っているようだが、すぐに切り替えて

「では、これで朝のHMを終わります。」

と言い、号令と共にHMは終わった。
席に座り、はぁと溜息を吐くと。

「はじめまして、お前どっから来たの?」

前の席の黒髪もふもふ男子が話し掛けてきた。

「別に、関係ないだろ。」

…少し嫌な言い方をしてしまっただろうか、相手が少し顔をしかめた。

「ごめん、ただ言いたくなかっただけだ。」

「そっか、なら仕方ないか…あ、おれ黒井 誠。前後同士、仲良くしようぜ?」

隣同士ならわかるが、前後同士とは…?
少し疑問に思いながら、俺も相手に再度自己紹介をした。

「俺は小鳥遊 ひかるだ。こちらこそ仲良くしてもらえると嬉しい…様な気がする」

「様なってなんだよ!」

突っ込みを入れながらへらへらと黒井は笑っている。
この中学校初めての友達か…仲良くできそうな気もしなくはないな。

なんて想像していたら、話し声が耳に入ってきた。

「ねぇ、また出たんだってね?」
「あの廃墟だろ?知ってる知ってる。女の幽霊が出るって噂だろ?」
「3組の男子が夜中こっそり行ったってねー…」
「嘘だろそんなん!行けるわけねえっての」


…なんの噂だろうか、少し気になるな。

「あの話が気になるのか?」

どうやら黒井は俺が気にしてるのに気付いたらしい。鋭いやつめ。

「…少しだけ」

「なら教えるよ。つい最近この学校の近くの廃墟に女の幽霊が出るって噂が流れ出したんだ。誰が流したかは知らないけど、気になるんだったら行ってみたらいいんじゃないか?」

「黒井は行ったのか?」

「いやいやおれは怖いの苦手だし…」

ふぅん…と口には出さず頭の中で呟いた。

噂、か
その廃墟、行ってみてもいいかもしれない。今夜一人で行ってみるか。


そんな事を考えていたら、授業の本鈴が鳴った。





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あきゅろす。
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