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噂話
六話


どうなってるんだ。

今、黒井の目の前に悪魔のような誰かが立っている。

その悪魔はもう少し遅れていたら黒井を貫いていただろう鉄の棒を受け止めていた。

「…危なかった。大丈夫?」

「あ…う、ん…?」

黒井も状況が全く理解できずかなり戸惑っている。

…ん?てか、この声って…

「「弓人!?」」

俺と黒井は同時にそれが誰かを確信し、それの名前を叫んだ。

「ごめんね、驚いたでしょ?」


不気味な黒い目

黒い緑が侵食した蝙蝠のような翼

本に出てきそうなとても長い耳

偽物とは思えない額から生えている一角

本物の悪魔のようだった。


「そりゃ、驚くに決まって…」


俺がそう言っているとまた女が鉄の棒を振り落としてきた。


「弓人前!!」

「ん?」

危ない!!
と思った次の瞬間。




「う、わ…」

「……!」

俺と黒井はぽかん、と口を開けて呆然としていた。

何が起こったのかというと、女が振り落とした鉄の棒を片手で払い除け床に落としていたんだ。

「ったく、危ないなぁ」

焦った様子もなく弓人はそう呟いた。
え、てか、手大丈夫なのか?

「ゆ、弓人…手…」

俺はそっと弓人に近付いて手を取り、掌を覗いてみたが。

「怪我…してないのか?」

掌には擦り傷一つ着いてなかった。

「このくらいで怪我なんかしないさ」

このくらい、か。

やっぱり人間じゃないんだな。








「ていうか早くここから出なきゃまた殺されかけるって!!」

「そ、そうだけど入り口見つかんないんじゃ出ようにも出られないだろ!!」

「とりあえず二人とも走って!」

そう言われてまた俺と黒井は走り出す。
今日この中でどのくらい走っただろうか…もうしばらくは走りたくない。




ドンッ



まだまだ女は鉄の棒を振り落としてくる。当たりそうで怖い。



ドスッ

ドスッ



まずい、ふらふらしてきた。

その次の瞬間足がよろけてしまい


ヒュッ


「しまっ…!」

目を思い切り瞑った。


あれ?

「しっかり走ってよ!」

どうやら弓人がまた受け止めてくれたらしい。

「ごめんっ」

「…まあいいや、それより入り口は」

「なんかさっきより周り見辛くない…?」

確かにその通りだ。
周りを黒い霧で囲まれているようだ。

「っ……」

急に弓人が止まった。
また女は鉄の棒を構える。

「ちょっ、弓人…!」

「…黒井、早く行くぞっ!」

「えっ、うわっ!?」

俺は黒井の手を握り全力で走って行った。弓人はきっと大丈夫だろうと信じて。

そしてまた女は鉄の棒を振り落とす。

「……!」

俺は走りながら後の光景を見ている。もうすぐで弓人に当たってしまう。






ダンッ



大きな打撃音が響き渡る。

その音とともに、鉄の棒は女を貫いた。

「ぅゎ……」

弓人が棒の側面を蹴り上げたのだ。

「…すっげぇな」

しばらくすると女が唸り声を上げ煙の様な姿に変わって行き、周りの黒い霧も薄まってきた。

「!…これで入り口がみつか…」

俺が見つかる、と言いかけた途端に建物が音を立てて崩れ始めた。

「うっわ、お約束展開じゃん!!」

「そんなこと行ってないで早くここから出てー!」

ばたばたと三人とも入り口ち向かって全力で走って行く。
あともうすぐ…!


ガラガラガラッ


いきなり崩れが激しくなって後ろから大きな煙を立てて一気に崩れ落ちて来ていた。

「間に合わないかもっ…」


バサッ


何かの羽音共に俺と黒井は何かに抱き上げられる。


「う、浮いてる…!」

黒井は驚いている、そりゃ浮くはずのない自分の体が浮いてるのだから驚くだろう。

俺はそっと上を向いた。

「しっかり捕まっててよ?」

どうやら弓人が持ち上げてくれている様だ。

「…ああ!」

そう返事を返すと弓人は一気に飛ぶ速度を上げた。




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