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噂話
五話


「…まじで?」

俺は今信じられないものを見ている。
真っ白な女が少し先に立っていた。

「…これ、逃げた方が…」

そう黒井が呟いたと同時に女が足を動かした。


ぱた


この音は…




ぱた




もしかして、一昨日から俺のことを着けていたあの足音…?


ぱた


まずい。
逃げないと。

俺の本能がそう体に呼び掛ける。






ぱたぱたぱたぱたぱた







「二人とも走って!!」

弓人の声にハッと黒井と俺は我に返る。

「走れってどこに!!?」

「入口!!」

そう言われた瞬間、俺は入口の方向に物凄い勢いで走って行った。

「誠も早く!!」

「こ、腰か抜けて立てない…」

あの馬鹿。本当に苦手なのになんでここに来たんだよ。

すると弓人がいきなり黒井の事を抱き上げた。

「っ…しっかり捕まって!」

「へっ!?」

そのまま弓人は黒井を抱きながら走って行く。
それに続いて俺も後ろから着いて行った。


走っている途中
女とすれ違い、こちらと目が合ってしまった。
その瞬間、女は俺に向かって口を小さく動かしているのが見えた。





いっしょ



そう俺には聞こえたんだ。











「はぁっ…」

かなり走ったのにまだ入口に着かない。どうなっているんだ…

「こんなに遠かったっけ?」

「結構近かったはずなのに…」

そうだ、こんなに遠くない。
まるであの日の帰り道の様だった。

「多分このまま走り続けても入口には辿り着けないかもね…」

弓人がそう言うと、黒井は顔を青ざめた。

「や、やだよそんなの!絶対出ないと…」

俺だって嫌だ。こんな気味の悪い場所にずっといたらおかしくなる。
絶対入口を見つけないと…

「じゃあどうやって見つけるっていうのさ?」

…何か見つけられない原因があるんじゃないか。例えばさっきのあの女とか。

「あの女をどうにかするとか…」

「一番ありそう」

黒井がそう口を挟んだ。怖がっててまだ弓人に抱き上げられている。

「よし、その女が原因なら退治しにでも行こうか?」

「どうやって退治すんだよ…」

ほんとにどうやって退治するんだ。そのまま女に殴り込むのか?それとも何かで刺すのか?

「…話し合い?それでもだめだったら…」

話し合いなんかで解決するものか。

「それでもだめだったからどうするんだ?」

「教えない!」

だろうな。

にしても不思議な人だ。心を読まれてるように思えるし、今も黒井を抱き上げているのにまったく息を切らしていない。

むしろあの女よりこいつの方が気になる…






しばらくして、やっと黒井が自分で立てるようになった。

「ごめん弓人…」

「別にいいさ、気にしないで」

「…黒井がもう立てるなら、早くまた奥まで行って元に戻してもらいに行くぞ」

そう俺が言うと二人はうんと頷いた。





「でもやっぱり怖いもんは怖いー…」

黒井は歩きながら俺の腕を掴みながらそう呟いた。

「俺だって怖いっての……弓人は怖くないのか?」

「怖いよ?」

嘘付け、全然表情にこにこしてるじゃないか。


しばらくこの怖い嫌な雰囲気に震えながら歩いていると、急に弓人が立ち止まった。

「…弓人?」

「……」

俺が呼び掛けてもうごかない。何やってるんだ。


すると急に弓人が黒井を引き寄せた。

…ほんと何やって








ガァンッ





「!?」

「危なかった…」

いきなり目の前に鉄の棒が降り注いだ。
まさかこれを予測していたのだろうか。

…ほんとに不思議なやつだ。

じゃなくて。

「なんでこんなものが落ちてくるんだよ…!」

「向こう見ればわかるさ、ほら」

弓人が指した方を見ると、あの女が宙に浮かんでいた。周りには幾つもの鉄の棒が浮いており、今のはあれを一本振り落としたものらしい。


「…これまずくない?」

「まずいに決まってんだろ…」

「でもまずはここから出して貰わないとね」

そう言うと弓人はあの女に話しかけた、が。







ドスッ




またいきなり鉄の棒が落ちてきた。
弓人はすれすれのところで棒を躱したようだ。

「あー…話し合いは無理そう」

「知ってた」

そう言うとまた鉄の棒が一本俺の目の前に落ちてきた、


殺される。

女は棒を構え、一気に全部振り落としてきた。



「避けて!!」


そう言われなくたって除ける。
俺達は必死に棒に当たらないように走り、避ける。

避けた方向にまた棒を落としてくるのでほんとギリギリで避けている。

「あっぶな!!」

「絶対当たらないでよ!」

「も、もう無理…」


黒井がそう言い動きが止まった瞬間。

鉄の棒が黒井目掛けて、落ちて













「黒井!!!!」















俺が叫んだと同時に、目の前に悪魔が現れた。



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あきゅろす。
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