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古キョン
#初恋電車/:01

※社会人古泉×高校生キョン




満員電車というものを体験した人はいるだろうか。

俺は今まさに体験真っ最中だ。だがこれで何度目になるかは分からない。
地元の中学を卒業し、高校生になってから3ヵ月は過ぎたが毎朝こうだ。流石にストレスも絶賛高騰中である。

『むさ苦しいな…クソ』

7月の照り付けるような日差しのおかげで朝から汗だくサラリーマンに囲まれる、といった状況だ。この状況を打破出来る奴がいたら今すぐ俺のもとへ集合してくれ。

ガタン、

電車が揺れる度に生暖かい感触が肩や背中に触れ、気持ち悪いことこの上ない。暑さのせいか、若干息の荒々しい中年のサラリーマンらしき男の吐息が首筋に吹き付ける。もう鳥肌が止まらない。

そんな中、俺は珍しいものを発見した。この電車に乗るようになってたまに見かける人物。

忙しい朝でも爽やかさを失わない一人の男。薄茶色の髪に色素の薄い瞳、スラリと伸びた長身。顔は整っており…まさにイケメン。

(勝ち組、って感じだな)

今日も涼しげな表情をしながら窓の外を見ているようだ。俺はドアの隅にいるがそのイケメン男は俺の斜め向かいのドア付近の手すりに掴まっていた。


『それにしても…今日はやたら押されるなぁ』


今は前にはドアと後ろには中年親父に挟まれている状況だ。全く勘弁してくれ。

やれやれ、とため息をつこうとした時ふと下半身に違和感を感じた。

『…ん?』

最初はこの満員電車のせいで誰かが当たっただけだろうと思っていた。しかし、その動きが段々大胆になっていき、人の手が明確な意思を持って動いていて、お…俺の尻をまさぐっているではないか。

痴漢かっ…?俺は男だぞ?!

そう思って首だけ曲げて後ろを確認すると、俺をドアとで挟んでいた中年のサラリーマンだった。そいつの手元は見えないが、明らかに怪しい荒い息遣いとなまめかしい目付きで俺を見ている。

がたん、

「ッ…、…!」

電車が揺れる度に一際強くグッと太い指が食い込んでくる。ぞわぞわと肌が粟立つ。
くそッ、気色悪ぃ!
その行為を拒もうとしたが、身体が言うことを聞かない。というか満員電車の中では身動きが取りにくい。

「はぁ、はぁ、はぁ」

『息を吹きかけるな!!』

後ろの中年男が背中までみっちり密着してくる。首筋の項に吹きかかる生暖かい息が本気で気持ち悪い。嫌悪感で気分も悪くなってきて、くらくらする。
俺が降りる駅について電車が止まる。俺がいる方とは反対側のドアが開き、人がほんの少しだけ動きはするが、中年男は俺の後ろから動こうとしない。

やばい、本当にやばい。もうだめだ……!
倒れそうになって、ぎゅっと目を閉じた。








「そこまでです」


「なっ、何だね君は?!」

目を開けると中年男は焦ったように俺から離れていき、振り向いたときに俺の後ろにいたのは……あの爽やかな男の人だった。


ざわめく電車内で、その男の人だけは冷静で輝いて見えた。
中年男の腕を捻り上げ、そのまま停まった駅に降りる。俺は男の人に手を握られて後ろを着いていく。


「さぁ、観念して下さい。貴方は彼に痴漢行為を働いていたでしょう」

「はっ、何を言ってるんだ?私が男に手を出したと?!」


していた事がバレ、中年男は血相を変えて言い訳しはじめる。

「僕は見ていました。諦めて下さい」

中年男ににっこりと笑いかけると、駆け付けた駅員と警備員に事情を話して引き渡した。

本当に…助かった。

安心して気が抜けてしまったようで、へなへなと腰まで抜けてしまった。

すると男の人はふらふらする俺を支えてくれた。


*続く*

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あきゅろす。
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