古キョン
恋愛操作2
ため息もそこそこに、仕方なく手元の一冊を手にとってみる。表紙からして、いやらしい感じはない。
そのことに少し安堵しながら、頁を開くと少年漫画とも少女漫画とも違うタッチや雰囲気の漫画だった。
内容は主人公が旅をするファンタジーな話で、その旅の仲間のひとりに恋をするようだ。
「…なんだか俺たちに似ているような」
漫画の主人公の特徴は俺みたいに髪は短く、強がりな性格で、惚れた相手は才色兼備な笑顔の絶えない剣士のようだった。
最初はまだ普通にファンタジー漫画として読める程度の友情物語りのようだったが、読み進めるうちにどんどん展開が怪しくなっていく。
戦闘中におかしな生き物に何かを飲まされ、気を失う主人公。剣士以外の仲間とははぐれていく。ふたりで暗い洞窟に身を隠す。そこで主人公に異変が…。
『大丈夫ですか、ヨキ』
『キリ…うっ…身体が、』
『どうしたのですか?!』
『身体が……あつい…っ///』
『……っ、』
『助けて、キリぃ…!』
『ヨキ……ッ!!』
そして……
「っあ゙ぁあああああああ!!!!」
バシッ
変な方向(ある意味正しい方向だが)にいこうとした漫画を思わず全力投球する。
「…はぁ、はぁ…!」
やってられるかクソッ!!
……しかし、一瞬だけでも古泉と俺が漫画のように絡んでいる場面を想像してしまったのは、内密にしていただきたい。
「…………寝るか」
一応漫画の内容は把握した。ようはありえん展開を繰り広げ、あんあん言って世界は平和になるんだな。きっとそうだ。
ではそういうことで。
おやすみ。
――――――――――――――
「ちょっとキョン!!あんた資料はどうしたのよ!」
…朝っぱらからハルヒの怒号を聞くはめになるとは思わなかった。
あれからすぐに寝た俺は寝過ごしてしまい、家に肝心の資料を置いてきてしまったのだ。
「中身はだいたい覚えてんだから良いだろ!」
「……え、あんたまさか読んだの?」
「はあ?!だってお前が読めって…!!」
「言ってないわよ?買って来て朝一でキョンに届けさせてって古泉くんに頼んだだけよ!」
「はぁああ?!」
やられた…!
くそっ、古泉のやつ…ふざけた真似を…!!
「ちょっとキョン?!今日中には持ってきなさいよね!!」
怒り心頭の俺はハルヒの言葉も受け流し、古泉がいるであろう部室へ向かった。
がちゃっ
「だぁあああー!古泉ィイイイイ!!!!!!」
「おや、どうされました?」
「どうされました?じゃねぇー!!!!;;」
いつものボードゲームの準備を終え、優雅に椅子に座っていた古泉の肩をひっつかんで揺さぶる。
ああもう!本ッ当にお前は何を考えてんだよ!!
「あは、激しいですねぇ」
「うるせぇ!あの漫画読まなくても良かったんだろ?!」
「バレましたか…」
「おまっ…お前のせいで変なことまで考えただろーが!!」
「変なこと、と言いますと…?」
「うっ……!!///」
一気にまくしたてたせいで余計なことまで言ってしまった。そこを上手く古泉につつかれて、とっさにあの漫画のワンシーンが思い浮かんでしまい、言葉につまる。
古泉の肩に置いていた俺の手が揺るんだ瞬間、奴はそれを見逃さず、あっさり奴の手に捕まってしまう。
「どんなことを考えてしまったのか…僕に教えて下さい」
「なっ…?!///」
手を握られたまま、にっこり微笑まれる。
*続く*
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