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ざ★はいすぺっく平凡
02

 ボキャブラリーが少なくて悪いんやけど……どこが寮やねん!外装もすごかったが、内装も相当だ。

 だって、シャンデリアがあるんやもん。土足で踏むんが申し訳ないくらい絨毯ふっかふかやし、置かれとるテレビがでかい。しかもフロントまであるとか、やっぱありえん。




「ねぇ、あんたが外部生?」

 突然話しかけられて俺は目を瞬いた。いわゆる男の娘のような、小柄でかわいらしい男子生徒である。ネクタイが緑なので三年生だろう。

「そうですけど、もしかして先輩が同室者ですか?」

 確かここの寮は学年関係なしだったはずだ。

「そうだよ。会長親衛隊隊長の宇津木葵。見ての通り三年さ」

「親衛隊隊長?」

 え、会長親衛隊隊長が同室って何フラグ?

「外部生だから学園に詳しい人がいいだろう、って。俺の同室者は卒業したからね」

 まぁ、確かにこの人なら詳しいだろう。説明&世話役に適任かもしれない。無闇矢鱈と威嚇するわけでもなさそうやし。

「そういう事ですか。知っとると思いますけど、和泉吉野です。一年間よろしくお願いします」

「こちらこそ。とりあえず移動しようか。部屋に行ってから説明するよ」



  * * *



 王道学園といえばカードキー。当然と言って良いのか、この学園もカードキーを使う。ただし、それだけではセキュリティに不安があるので他に仕掛けがあるらしい。

「カードキーの右下。この番号が部屋番号ね。B208ってあるから、B寮の二階、八号室って意味」

 先輩はカードを見せながら言った。

「部屋の鍵を開けるにはまずカードキーを差し込む。それからこの黒い場所に指を置けばいいよ。ランプが点滅したらカードキーを抜いていい」

「指紋認証なんですか?」

「うん。カードキーに登録されている指紋と合わせてるから、他の人には開けられないんだよ。入学前に指紋取ったでしょう?」

 そういえば、必要な書類にあった。何に使うのかと思ったが、トモさんの学校なので深く考えなかったのだ。

「これってどの指でも開くんですか?」

「俺は試した事ないけど、大丈夫なんじゃないかな。……さぁ、入って入って」

 ドアを開け、促すように言われたので先に足を踏み入れる。さすがにホテルと違い靴は脱ぐようで、小さい段差になっていた。

「一足ぐらいなら出しっぱなしでいいけど、なるべく靴箱にしまってね。たぶん友達が来たりもするから」

「わかりました」

 自分がそれなりに金持ちだから言える事かもしれないが、何足も放置できるほどのスペースはない。マンションとかならこんなものなのだろうか。




 共同スペースはリビングダイニング、キッチン、バスルームである。先輩が軽く説明してくれたが、十分広いし設備も充実している。あと洗濯機とベランダがあるのには驚かされた。自立を促すためだとか何とか。

「さて、部屋の事はこれでいいとして、荷物の整理は大丈夫?」

「あんまり量ないですし、ダンボールのままほっとっても問題ありません」

 本とか趣味のものとか……まぁぼちぼち片付けたら良いだろう。

「じゃあ先に話をしようかな。お茶でも入れるから座ってて」

 言われてソファに座ると、固すぎず柔らかすぎずで驚いた。うちの家は日本家屋やからソファもベッドもないしなぁ。

 じいさまが変なところで古臭い人なので、扇風機とかこたつとか炊飯器とかはあるのにソファ、ベッド、エアコン等は一切ない。今時滅多にない家だろう。

 そういえば置いてきたシロ(犬)とアオ(猫)は仲良くしとるかなぁ、なんて、感傷にひたりながら部屋を眺める。

 アカン、もうホームシックやろうか。情けないなぁ。



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