series fall 170cmという平均的な身長に平凡な顔な俺、浅井空(あざい そら)16歳。 高校に入学して半年が経ち、友達もできたし学校生活にも大分慣れてきた。 今まで平凡な毎日を送ってきた俺だが、高校に入学して、平凡とは少し違ったことも体験している。 「空あ、今日集会があるから来いだって」 メールが来たのだろう、ほら、と携帯の画面をこちらに向けているのは友人の新城だ。変わったことを体験することになったきっかけはこいつだ。 高校に入ってすぐに仲良くなった新城は、不良の集団、いわゆるチームというやつに入っていた。名前を聞くと、この地区で一番強いチームだった。 最初にそれを知ったときは吃驚したが、「溜まり場に来てみる?」と軽く誘われたので、こくんと頷きこれまた軽い感じで溜まり場とやらにお邪魔してみた。そしたらチームの特効隊長をやっているらしい人が気に入ってくれたらしく、今では結構な頻度で顔を出している。 「あ、悪い、今日委員会だったの忘れてたわ」 用事を思いだし、前の席に居る新城に遅くなることを伝える。 「あー?んなもんサボれよ。お前が遅くなったらヨウが不機嫌になんだよ」 ヨウというのが先程言っていた特効隊長だ。美形で身長も俺より高く大人びているのに、俺達よりも年下でまだ中3らしい。…世の中の不公平を垣間見た気がする。 「お前じゃないんだからサボらないって。新城だって幹部なんだから抑えられるでしょ」 「ばっか、お前、あいつとガチでやったら俺でも勝てねえよ」 「えっ!そうなの?」 新城が喧嘩をしているところは何回も見てきたが、五人くらいでかかってきた相手も1人で倒していたし、とても強い。それより強いって…… 「そんなに強いんだ」 「あいつはやべえ。敵じゃなくてよかったっていつも思うもんな。……もしかしたら総長と張るんじゃねえか?」 「へえ…、そこまで」 口数は多くはないが、いつも甘えてくるヨウしか見ていない空には想像出来ない。 「まあ取り敢えず委員会が終わったら速攻で来いよ」 「はいよー」 ****************** (あー、くっそ、遅くなった) 委員会の話し合いを終えた空は小走りでチームの溜まり場へと向かっていた。普段は一時間もせずに終わる委員会が、こんな日に限って二時間近くかかってしまった。新城から遅いとどやされてしまうかもしれない。 (ま、どうせチームの話し合いとか聞いても解んないし) と思いつつもチームのみんなには会いたいので、足が遅くなることはなかった。 急いで走ったからなのか思ったよりも速く到着したが、普段の運動不足が祟り息切れしてしまっている。空は息を整えながら溜まり場であるバーの扉を開けた。 「こんばんはー………」 「っ空さん!」 扉の近くに立っていた緑の髪の男に慌てたように大声で名前を呼ばれたため少しビクッとしてしまった。何度か話したことのある奴なので、新城どこ?と聞いてみた。 「どこ?じゃないっすよ!なんでこんなに遅いんすか!」 「いやー、委員会が長引いて…。新城怒ってる?」 ははは、と笑いながら言うが男の焦りようは更に増す。 「新城さんも怒ってますけどそれよりヨウさんっすよ!ああもうこんなとこで話してないで早く部屋に行ってください!」 あらー、ヨウが拗ねてんのかな。 あいつ拗ねたら長いからなー。 新城達が手を焼いているのかもしれない。 「ありがとなー。じゃあ俺行くわ」 いいから早く!という言葉を後ろに聞きながら、幹部のみんなは奥の部屋にいるらしいので、チームのみんなが騒いでいる間を早足で歩いていった。 [*back*][*next*] [戻る] |