True Rose
 〜灰の降る世界〜


「只今より公開処刑を行う」
 先頭を歩いていた男が声高に宣言する。その態度からして、上官だと思われる。騎士団の団長だろうか。
 他の騎士によって、鎖で拘束されていた女が、十字架に張り付けられる。
 遠目にも分かる程に、女の体のいたる所には殴られた跡や傷が多くあった。それが彼女がどう扱われたか方を如実に物語っていた。
 暴れる事すら疲れたようだ。涙を溢れさせながらもぐったりとしている。
「この女は魔女である。災いをもたらす者であり人にあらず」
 ――魔女狩りか、と誰かがそう呟いた。
 「魔女」として捕えられた者の末路はもう決まっている。
 生きたまま火を放たれ、焼け付く痛みに耐えながら死が襲って来るのを待つだけだ。
 どれ程助けを乞うても聞き届けられる事はないだろう。罵られ、それに耐えるだけだ。

「………酷い、ね」
「……」
 ローズにだけ聞こえる程度の声で、ファイは呟いた。ローズは頷く事しか出来ない。
 ファイから昔教えられた。「魔女狩り」と称しながらも、実際に狩られているのは「魔女」などではないのだと。おぞましい魔術を使う力を持っている所か、魔力も何の力もなく弱い人間が大半なのだと。実際に魔力を持っているかなど関係ない。
 戦続きで荒廃した大地、それにより疲弊している人々、病や貧困から不安や恐怖が耐えない。それ故に人々は縋るものを必要としていた。
 己の足だけで立つには些か厳しい世界で生きていく為には支えが必要である。精神状態を保つには何かに縋らずにはいられなかった。
 それ故に神を信じた。己を救ってくれるだろう「神」に祈り信仰を捧げた。
 しかし、それでも病は流行るし飢饉も起こる。そういったものが不安と恐怖をより高めた。
 何か「悪」を必要とした。「災の根源」を必要としていた。
 誰が悪い訳でもない。しかし災厄の根源を必要とし、それを断つ事によって多少の安心感を得ていた。
 そしてそれらの矛先は必然的に弱い者へと行く。女や子供、老人といった、弱く社会的にも地位の低い者達は格好の的となった。
 また、国家――王に仇を為そうとする者、王にとって邪魔な者も「魔女狩り」と理由付けられ殺される事も少なくないという。

 全てローズはファイから聞いた。
 それを知る者は極少数だという。それ故に魔女狩りは盛んに行われているし、人々はそれを寧ろ喜んでいる節がある。




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あきゅろす。
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