True Rose
〜灰の降る世界〜
3
「………あ」
「なんだ?」
人の波を意に介さず歩を進めていたファイが、不意に足を止めた。
それを不思議に思い進行方向へと視線をを向けば、そこには、同じように足を止めて何かを食い入るように見つめる人々がいた。
その視線の先には、海を割るかの如く群衆を割って行進する一団。彼等は整った列を作り、堂々と歩を進める。
皆一様に、腰には剣を差しており、身を包む鎧には紋章が刻まれていた。
十字架とそれに巻き付くように描かれた蔦、その紋章を鎧に刻む事を許されているのはただ一団だけ。
――騎士である。
騎士、と言っても概ねそれが指すのはほんの一部だ。国に――王に仕える、王直属の部隊。公に「騎士」と言って指すのはそれである。
それ故に、騎士はこの上ない名誉職となっていた。誰もが憧れ、誰もが敬う。
――勿論、例外とてあるが。
「……」
不機嫌そうにローズは視線を反らした。その瞳に宿るのは明らかに不快感や不信感だ。
出来るなら、騎士を目にした事など今直ぐ忘れてしまいたいくらいだった。
騎士の仕事は王の為に働く事である。王の為にその身を、己の全てを捧げる。王の命令であれば、どんな事でもしなければいけない。
任務は大きく分けて三つある。一つ目は王の身辺警護、二つ目は他国との戦争、三つ目は国内の反乱などの鎮圧。
故に、魔女狩りといったものも行っているのも騎士だ。
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