True Rose
 〜灰の降る世界〜




 ベッドの上に横たえた体は、それでも重い。まるで鉛にでもなってしまったかのような感覚に、溜め息を漏らす。
 体が疲弊している訳ではない。そうではなく、心なのだ。
 何度見ても、魔女狩りの光景は慣れない。見たばかりの光景が、消えては現れ、消えては現れと、幾度も幾度も脳裏を掠めていく。
「……大丈夫、か。どこがだ」
 ファイに言った言葉を――自分に言った言葉を思い出し、溜め息混じりの苦笑が漏れる。
 無意識の内に握ったシーツは、くしゃりと小さな音を立てて皺になった。
 強くなったつもりだった。平気なつもりだった。でも、自分はやはりまだ弱い。
 どうしても過去を思い出してしまうし、そうでなくとも痛い。偽りに包まれた世界が。炎と痛みとに支配された世界が。。
 魔女狩りが憎い。それを行う騎士が憎い。それを命令する王が憎い。何も疑う事もせず、狂気を走らせる大衆が憎い。
 ……でも、何よりも憎いのは憎む事しか出来ない自分だった。見殺しにする事しか出来ない自分だ。
 奪われていく命は、冤罪だというのに。ちゃんと生きて、感情があって、大切なものがあって――。
 時折、その悔しさに耐えきれなくなりそうになる。悔しくて、悔しくて、その感情をどう処理して良いか、分からなくなる。
「……どうせアイツも、気付いてるんだろうな」
 気丈な様子を見せたももの、本当はローズが大丈夫ではないのだと分かっているのだ。だからきっと彼は今ここにいない。
 ローズが弱り切った姿を見せる事を嫌うのを、知っているから。気を利かせて何処か部屋の外に行っているのだろう。
 そういった配慮などを感じる時、ファイとは長い付き合いだなと改めて思う。
 どれくらいになるだろうか、あの日出会って、共にいるようになってから――。





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