True Rose
 〜灰の降る世界〜




 ローズの母と父は、ある研究をしていた。それは、魔力を――精霊との意思疎通能力を増幅させる為の研究だったと思う。
 人は誰しも、それを持っている。しかし、全ての人間が強い訳ではない。持っている事に全く気付かないような人間が大半なのだ。
 だが、皆が、精霊と意思疎通出来るようになったら楽しいではないか。両親は、そんな事を言っていた。ローズも、元々魔力は殆どなく、しかし魔力の強い母を見ていた為に、精霊と関わりたいと思っていた。彼らが研究を始めた頃は、魔女狩りなど考えられもしなかった。
 そしてあの日、ローズを実験台にしようとした。それは、娘を使うくらいだ、失敗など考えられなかったのだろう。
『ローズ、怖い事はしないわ。大丈夫よ、母さん達に協力してくれないかしら?』
『うん! ローズも、精霊さんとお話したいの!』
『信じていいからな』
『うん』
 けれど、それは失敗したのだ。いや、結果的には失敗ではない。ローズは魔力を手に入れたのだから。
 その反面で、その得た魔力の強大さに魔力の暴走を起こしてしまったのだ。殆どなかったそれを、人工的に唐突に得たのだ、それも仕方のない事だったのかも知れない。
 幼いローズには、どうしてよいか、分からなかった。ただ、どうしようもない勢いでそれは爆発した。その、力の奔流に逆らえなかった。止める術をしらなかった。
 母の息を飲む姿、父の歪んだ顔。二人が、ローズを止めようと、必死に呼び掛ける声は聞こえてはいたが、ローズは首を振る事しか出来なかった。
 その、何もかもが恐ろしかった。両親に火が降りかかっていた。二人は赤く爛れていった。それは自分の所為で、二人は熱さとその痛みに苦しそうに悲痛な声を漏らしていた。それは、力の暴走を加速させた。
 そして、辺りは炎に包まれた。直ぐにそれは村全体へと広がり、何もかもが、焼けた。いや、ローズが焼き尽してしまったのだ。残ったのは灰だけ。ローズは、灰色の空の下で、記憶を失くした。
 赤く揺らめく炎と空を舞う灰だけが、記憶に残った。




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