True Rose
 〜灰の降る世界〜





「どうにかならないものかねぇ、これじゃ安心して移動出来ねぇよなぁ」
「全くだよ。しかし、こんな事に国が動いてくれるとも思わないし、ね……」
 ふと聞こえて来た声に、無意識の内に耳を傾ける。
 食事の手はそのままに気付かれないように。僅かに視線だけを動かすと、厨房の方で囁き合う姿が見えた。
 テーブルを挟んで向かい合うファイを見れば、同じように耳はそちらに向けているのが分かる。
「先代の王様なら、少しは気に掛けてくれたかも知れないがなぁ…」
 疲弊しているような声で会話は続けられる。
 現在この国の王であるキラル・ギルデッドはまだ歳若い。二十になるかならないかという、王としてはまだまだ勉強が必要な歳だと聞く。
 しかし、先代の王の逝去により、若きままに王位継承を余儀なくされた。その若さ――寧ろ幼さと偏った見解故に、国政は乱れている。しかし、異を唱えられるものはいない。
(………あまり関わりたくはない、な)
 政治に関してローズはあまり耳にしないようにしている。入れたとしてもどうにもならないものだし、魔女狩りとて酷くなった原因は王や国にあるのだから。

「それ、詳しく聞かせてくれないかな?」
 不意に響いた声に、ローズは頭を抱えたくなった。今までの経験からしてファイが首を突っ込みたがるのはよく分かってはいたが。
 案の定、前の席に視線を戻せば、先程までロそこに座っていたファイは、厨房の方で爽やかな笑みを浮かべている。
「お、お客さんっ!申し訳ありません、聞き苦しい話を…」
「いや、それはいいんだ。さっきの話。山賊とか聞こえたんだけど?」
 困惑する店の人間に構わず、ファイは先を促す。





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あきゅろす。
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