[携帯モード] [URL送信]

小さな恋のうた
出来事…告白
「マッチィ、何ボ〜っとしてんの?一匹も取ってねーじゃん。オレのやるよ」

林の木漏れ日の中で立っていた僕に、蝉時雨の音にも負けじと耳に入ってくるグンちゃんの声。
相変わらずの世話好きで、自分の籠からバッタを二匹僕の籠へと移し終える。


「ありがとう」


素直に言えばグンちゃんは満面の笑みで「おう」っと返事をくれる。

僕の1番好きなグンちゃんの顔に遭遇し、僕は、自分の気持ちを伝えたいという衝動に駆(カ)られる




「…グンちゃん」


「ん〜?」







「あのね」




「ん…?」









.
「好き」




蝉時雨がよりいっそう激しく鳴く。

…今思えばそれは、それ以上言うなというサイレンだったのかもしれない。


グンちゃんは目を丸くして状況がよく飲み込めていないようだ。


「僕、グンちゃんが好き」


サイレンは鳴りやまない。
グンちゃんは「それって…」と混乱している頭を整理していた。


不思議と失恋だとか今までの関係が崩れるだとか…そーゆー不安や心配は無かった。付き合う付き合わないは別として自然に「そう」って受け入れてくれる気がした。


それでもサイレンは鳴りやまない。



.

「それって…」




「愛の告白!?」
「マッチーがグンジに…マジでぇ!?」
「男同士だぜ、気持ち悪ぅ〜っ」



サイレンの音が人の声に変わる…一緒に来ていたクラスメイトだ。

「お前、グンジのこと、そーゆー目で見てたのかよ〜!」
「友達のくせに、ふざけんなよ!!」
「こんな奴、ほっといて行こうぜグンジ」
「えっ、え?」
「ほら、早く!」

頭の混乱を整理出来ないままグンちゃんは、みんなとどこかへ消えてしまった。


それでも蝉時雨は鳴きやまない。






.

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!