小さな恋のうた
出来事…告白
「マッチィ、何ボ〜っとしてんの?一匹も取ってねーじゃん。オレのやるよ」
林の木漏れ日の中で立っていた僕に、蝉時雨の音にも負けじと耳に入ってくるグンちゃんの声。
相変わらずの世話好きで、自分の籠からバッタを二匹僕の籠へと移し終える。
「ありがとう」
素直に言えばグンちゃんは満面の笑みで「おう」っと返事をくれる。
僕の1番好きなグンちゃんの顔に遭遇し、僕は、自分の気持ちを伝えたいという衝動に駆(カ)られる
「…グンちゃん」
「ん〜?」
「あのね」
「ん…?」
.
「好き」
蝉時雨がよりいっそう激しく鳴く。
…今思えばそれは、それ以上言うなというサイレンだったのかもしれない。
グンちゃんは目を丸くして状況がよく飲み込めていないようだ。
「僕、グンちゃんが好き」
サイレンは鳴りやまない。
グンちゃんは「それって…」と混乱している頭を整理していた。
不思議と失恋だとか今までの関係が崩れるだとか…そーゆー不安や心配は無かった。付き合う付き合わないは別として自然に「そう」って受け入れてくれる気がした。
それでもサイレンは鳴りやまない。
.
「それって…」
「愛の告白!?」
「マッチーがグンジに…マジでぇ!?」
「男同士だぜ、気持ち悪ぅ〜っ」
サイレンの音が人の声に変わる…一緒に来ていたクラスメイトだ。
「お前、グンジのこと、そーゆー目で見てたのかよ〜!」
「友達のくせに、ふざけんなよ!!」
「こんな奴、ほっといて行こうぜグンジ」
「えっ、え?」
「ほら、早く!」
頭の混乱を整理出来ないままグンちゃんは、みんなとどこかへ消えてしまった。
それでも蝉時雨は鳴きやまない。
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