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小さな恋のうた
夏のデート
8月になっても大抵僕たちは部屋の中で過ごした。
その理由は僕が外に出たくなかったからだ。
相川は文句ひとつ言わずに僕のそばにいる。
せっかくの夏休みなのに…なんだか気の毒になった。

「相川…お祭り行こうか?」

僕の誘いに相川は「デデ、デート!?」と驚いた後にすごく喜んだ。
今日は隣町で花火大会が行われると新聞に載っていて、電車で行けば3駅くらいだし、何より知り合いに会う確率は低いだろうと腹をくくった。
知り合いにあったとしてもアイツやアイツの親しい友達でなければ僕は平常心でいられる自信があった。

夕方に電車に乗って「夜店で何食べようか?」等と喋っているとあっという間に隣町。僕は数回しか訪れたことがない。けれど思い出も親しみも無いこの町の方が生まれ育った自分の町よりも解放感があって好きだと感じた。

夜店に近い公園から花火をみようという話になって、花火が始まるまで僕たちはベンチに座ってたこ焼きやかき氷を食べていると、ドーンと大きな花が夜空に咲いた。

「キレイだね、相川」

久しぶりに見る花火に感動する。小学生の頃は毎年みていたのに…。

「マチ…花火、好き?」
「え?」
「好き?」
「うん…好きだけど…」

そこまで言うと相川は「俺も〜♪」と言って僕の唇に軽くキスをした!

「相か…っ!外ッ!!!」

外ではいちゃつかない約束をしてるのにっ!
僕は怒っているのに「へへっ♪」と相川は笑う。

今さらだけど相川は本当に笑うようになった。

そう思うと怒る気が失せてしまう。

「ちょっとトイレ…」

僕がベンチから立ち上がると「早く、ね♪」と相川はベンチに座ったまま僕を見送る。

ちょっとだけ「着いてきたらどうしよう」とか思ってしまったけれど…その心配は無意味だった。


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あきゅろす。
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