小さな恋のうた
マチと相川の夏休み
◆マチルSide◆
夏休み。
「わ〜ぃっ♪マチの家〜♪」
相川の嬉しそうな声が玄関だけではなく奥にあるキッチンにまで届いて「おかえりなさい」と僕のお母さんが出迎えに来た。
「あっ!マチママ!」
相川は僕のお母さんを確認すると抱きしめて「久しぶり〜」と頬にキスをする。
母さんもそれを自然に受け入れていた。
相川と僕が交わった≠サの日以降、相川の急激な寂しがり屋も治(オサ)まり僕のトイレに同行しようとはしなくなった。とはいえ朝起きれば大抵は相川がいるし朝と眠る前に頬にキスをする。部屋の中ならその行為を素直に嬉しく思えるけれど、校内で偶然会った時やカフェテリア(食堂)に一緒に行く時に愛情表現をされるとついつい冷たい態度をとってしまって相川を傷つけていた。
それで拗ねたり苛苛した態度をとるものだから今年の夏は僕の家においでよと誘うとすぐに機嫌を治してくれて…今に至る。
玄関からキッチンの方へ向かうにつれて良い匂いがするなと思うと
「今日は真知流の誕生日なのよ」
とお母さんは相川に説明した。すると相川は「へへっ」と笑い「知ってる〜♪」と返事をした。
夜になってお父さんが帰ってきて誕生日会をが始まった。
ご馳走やケーキを食べた後お父さんは風呂へ入り僕たちは後片付けをするお母さんのお手伝い。
皿を洗っているお母さんの後ろから「マチママ〜」とまた相川は抱きついた。
「マチ…生んで、ありがと〜」
その言葉に僕もお母さんもびっくりしたけれどお母さんはにっこり微笑んで「こちらこそ」と言い、僕の方を見た。
その目は確かに「いいお友達ができてよかったわね」と言っていた。
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