小さな恋のうた
夏休み終了
夏休みが明けてもセミはまだ鳴いていた。
セミは僕の不幸を嘲(アザ)笑う嫌みな生き物であり、また不幸を知らせる生き物だ。
今日のセミは僕のテストの点数の悪さに爆笑しているようで、僕はムカムカしてしまう。
僕がテストでこんな結果を生んだのは夏休みに勉強せずBL本に夢中になって、なっちゃん先生と読んだ本についての感想を書庫室で熱く喋ったせいだ。
セミは関係ない。
でもむかつく!
早く成績を戻さないと!
公立中に通うはめに…っ!!
「こんなんじゃ、3度めの恋もできやしない」
僕は図書室の机の上で頭を抱えた。
現状としては「恋がしたい」と切望していた夏休み前と何も変わっていない。
ただ…
相川を好きかもしれないと意識した途端、急速に相川への思いやトキメキが雑草のように増えていく。
毎日が草むしりだ。
「本当に言わないつもりなのかい?」
気づけばなっちゃん先生こと長束先生が隣にたっていた。
「…言わないって…何をですか?」
「告白の件さ。ルームメイトの…相川くんだっけ?…その子に気持ちを伝えなくて後悔しないかい?『言えば良かった』『言って傷ついた方がマシだった』って…」
「先生…心、読めるんですか?」
「まさか!…顔に書いてあるよ」
長束先生はよく喋る人ではあるけれど、人の秘密や悩み事を他人にばらすような口の軽い人ではないということを僕は充分理解した上で悩み事を相談していた。
恋愛もそうだけど勉強とか昔の事とか色々。
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