[携帯モード] [URL送信]

うさぎとらいおん

お弁当を食べ終わると、スケッチブックを開いて、作業に取り掛かった

今日も、少しだけ違う風景、如月さんの膝の上、目線が少し高くなったからかな

温かいぬくもりにつつまれながら見る風景は、いつもより優しく感じられた

「絵が好きなのか?」

「はい、凄く好きです、一応美術学科を希望していますから」

山奥高校は、一年の時は通常の高校と一緒なのだが、二年に上がる時に希望する学科に分かれることになる

進学を主な目的とする普通学科、美術を専攻したい者のための美術学科、音楽を専攻したい者のための音楽学科、体育を専攻したい者のための体育学科の四つがある

「如月さんは、上級生ですよね、何学科なんですか?」

「俺は、体育学科の3年だ」

「そうなんですかー、僕はからっきし運動は駄目で、絵しか取り得がないんですよ」

「サンドイッチも美味かった」

「あ、ありがとうございますっ」

思わぬお褒めの言葉に、耳が赤くなった、さりげなく褒めてくれる如月さんって、やっぱり大人だ


「絵は…」

「はい?」

「絵は、人の心を映す鏡だ…」

「えと、そうですか?」

「澤田の絵は、凄く、優しくて綺麗だ、それに温かい…」

「そっ、そんなことないですっ、僕なんてそんな、そんなそんな、まだ未熟ですっ」

「素人の俺が言うのもなんだが、見ていて、心が洗われるようで…俺は、澤田の絵が、、、好きだ」

低く、優しく、囁くように耳元でいわれて、恥ずかしくて嬉しくて、茹蛸のように顔が熱くなってしまった


「あ、ありがとう、ございますっ…」

「あぁ」

恥ずかしくて、恥ずかしくて、消え入るような声でお礼を言うと、静かに答えてくれた

[*前へ][次へ#]

9/10ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!