うさぎとらいおん
9
お弁当を食べ終わると、スケッチブックを開いて、作業に取り掛かった
今日も、少しだけ違う風景、如月さんの膝の上、目線が少し高くなったからかな
温かいぬくもりにつつまれながら見る風景は、いつもより優しく感じられた
「絵が好きなのか?」
「はい、凄く好きです、一応美術学科を希望していますから」
山奥高校は、一年の時は通常の高校と一緒なのだが、二年に上がる時に希望する学科に分かれることになる
進学を主な目的とする普通学科、美術を専攻したい者のための美術学科、音楽を専攻したい者のための音楽学科、体育を専攻したい者のための体育学科の四つがある
「如月さんは、上級生ですよね、何学科なんですか?」
「俺は、体育学科の3年だ」
「そうなんですかー、僕はからっきし運動は駄目で、絵しか取り得がないんですよ」
「サンドイッチも美味かった」
「あ、ありがとうございますっ」
思わぬお褒めの言葉に、耳が赤くなった、さりげなく褒めてくれる如月さんって、やっぱり大人だ
「絵は…」
「はい?」
「絵は、人の心を映す鏡だ…」
「えと、そうですか?」
「澤田の絵は、凄く、優しくて綺麗だ、それに温かい…」
「そっ、そんなことないですっ、僕なんてそんな、そんなそんな、まだ未熟ですっ」
「素人の俺が言うのもなんだが、見ていて、心が洗われるようで…俺は、澤田の絵が、、、好きだ」
低く、優しく、囁くように耳元でいわれて、恥ずかしくて嬉しくて、茹蛸のように顔が熱くなってしまった
「あ、ありがとう、ございますっ…」
「あぁ」
恥ずかしくて、恥ずかしくて、消え入るような声でお礼を言うと、静かに答えてくれた
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