†涙目のサディ† 6.翼のはえた使者(4) 「そうだな、そんな試練ならいらないな……」 シンラは少しサディに気圧されているようでした。 「まあ、『神の与えたもうた……』っていうのも、勝手に人間が言っていることだし、何でもかんでも神様のせいにするのも神様が気の毒だぜ」 ヨルがシンラの背中に乗って頭を小突きました。 「そういうこと、魔女が神様、神様っていうのもおかしいわ。魔女は無神論者なの。神様が平等でないから魔女が生まれるんだし」 ツキがシンラの尻尾をわざと踏みつけました。 そのとき、シンラが急に立ち上がったので、ヨルとツキは転びそうになりました。 「客のようだぜ」 シンラは玄関のドアを見ていました。 やがて、外からそれを叩く音が聞こえました。 黒いコートと手にしたほうきは、どこから見ても魔女でした。 その人物と目が合ったとき、サディは強い突風を受けたように身がすくみました。 人間の発する圧力――単に「威厳」や「貫禄」という言葉だけでは表せないような――例えば数万人の歓喜や憤怒の叫び、恐怖や悲しみの悲鳴、そういったものを叩きつけられるようで、ただ、向かい合って立っているだけなのに、何故かサディの足は震えてきました。 [前へ][次へ] [戻る] |