†涙目のサディ† 5.見習い魔女(10) サディは左肩を固定され、ソファに寝かされました。 しばらくは家の仕事はできません。 せっかく飛び上がることができて、コツを掴んだかもしれないのに、空を飛ぶ練習も禁止です。 「まあ、飛べることは証明されたんだ。あせらず行こうぜ」 しょんぼりと横たわる、サディをシンラがなぐさめました。 「はい……ありがとう、シンラさん」 「ああ、前々から言おうと思ってたんだが、『さん』は付けなくていいぜ、俺たちも『サディ』と呼ぶから」 近くにいたツキもうなずきました。 ヨルも「まあ、半人前とはいえ、魔女に『さん』付けで呼ばれるのはくすぐったいな」と同意しました。 「こんちはーっ!」 そのとき、元気の良い声とともに、勢いよくドアが開きました。 サディはもう見なくても誰だかわかりました。 淡色のコートを着た、プラチナブロンドの髪の魔女です。 「あらららら、どうしちゃったのよ。サディちゃん?」 ルーシアがサディに駆けよると ちょうど、部屋から出て来たフレイヤが事情を説明しました。 「ふうん、まあ、最初はよくあることなのよ、気にしない。首の骨を折ったりしないで良かったわ」 「まったくだよ」 フレイヤがお茶を煎れながら、サディの代わりに答えました。 「せっかく新しいほうきを持って来たのに、ちょっとタイミングが悪かったわねえ……それにしても」 ルーシアはサディの固定された腕をまじまじと見たあと、少しあきれたように付け加えました。 「あたし、あなたが立って歩いているところをまだ見たことがないわ」 第五章 見習い魔女 了 [前へ] [戻る] |