†涙目のサディ† 5.見習い魔女(5) 「では、フレイヤ様、次の月例会に。お弟子さんも」 「サディちゃん、おいしいお茶をありがとう」 「……い、いいえ」 「次の月例会までに何とかなるといいんだがね」 サディがフレイヤを見上げました。 「げつれいかいはいつですか?」 「満月の夜だよ。魔女の力は満月に一番強くなるんだ。まあ、強くなると言ってもそんなに変わらないけどね。次は二十九日だよ」 あと一週間もありませんでした。 今の状態では、一週間後に空を飛んでいる自分の姿はとても想像できません。 たくさんの人たちと会って、見られたり話したりするのは、あまり気が進みませんが、フレイヤの期待に応えられないのが辛いのです。 もしかすると、フレイヤの評判まで悪くするかもしれません。 うなだれるサディの肩に、エレンがそっと手をのせました。 「頑張ってね。きっと飛べるようになるわ。魔女の背中には見えない羽根がはえてるのよ」 ふたりを見送ったあと、サディは再びほうきを持って庭へ出ました。 こうなったらもう特訓しかありません。 特訓といっても、やはりどうすればいいのかはわかっていませんでしたが、やる気だけは数倍になっていました。 とりあえず、ほうきにまたがりジャンプしてみます。 見た目の悪さはしかたありません。 恥ずかしいのをこらえて、なるべく空に近くなるように、一生懸命、地面を蹴りました。 しかし、残念ながら良い結果は出ません。 すぐに、サディは息が切れてきました。 使い魔たちも複雑な顔をして見ています。 「サディ……」 見かねたヨルが代表して意見を言いました。 「格好悪いからもうやめろよ」 サディは疲労と恥ずかしさで顔を赤くして、うつむいたまま黙ってうなずきました。 [前へ][次へ] [戻る] |