[通常モード] [URL送信]

†涙目のサディ†
4.遠い記憶(7)
 魔女狩りが下火になった頃、大陸の魔女はほとんどいなくなっていました。
 しかし、千人にひとり、あるいは万人にひとり、魔女の素質を持った者は生まれてきました。
 ただし、死ぬまで自分の能力に気づかない者や、隠し通した者もいるので、正確な人数は分かっていません。
 魔女にとって災難だったのは、政府が「黒死病は魔女のせいではなかった」と公表してくれなかったことです。
 もともと政府は、魔女のことを良くは思っていなかったし、魔女狩りの指導者を殺したのは魔女だと確信していたので、完全に敵対する立場になりました。

 ほとんどの民衆は、時がたつにつれて、本当に魔女が黒死病をもたらしたのか疑問に思うようになりました。
 しかし、自分たちの行為を正当化するためには、魔女を悪役にするしかありません。
 人々は、うしろめたい気持ちを持ちながらも魔女を弾圧していきました。

 そのような理由から、自分の能力に気づいた魔女は、ひっそりと社会から姿を消しました。
 中には、他人に先に気づかれ、地域から追われた者もいます。
 彼女たちは身内と決別するために名前を変え、人里離れた森の中で暮らすようになりました。

 そんな中で魔女たちは、自分たちの身を守るため、また、新たに誕生する魔女を導くために、「魔女同盟」を結成しました。
 魔女同盟の活動により、森での暮らしの改善、知識の交換が盛んになると、森で採れた薬草やそれを加工したものなどを、一般人と売買をしたりする余裕も生まれました。
 魔女狩りから百年近くたって、まだごく少数ではありますが、人々はようやく魔女の存在を認めるようになったのです。


[前へ][次へ]

7/10ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!