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†涙目のサディ†
3.新しい生活(1)
 サディが魔女フレイヤの家をたずねてから三日目の朝。
 彼女の熱はいくらか下がり、体力は回復に向かっていました。
 しかし、何か家事を手伝おうとしても、まだ熱が下がってしまうまで駄目だとフレイヤに止められ、何もやらせてもらえませんでした。

 それで今も、ベッド代わりのカウチソファー(長椅子)に半身を起こして、こんなことで良いのだろうかと思いながら、フレイヤの作った薬湯を飲んでいました。

 狼のシンラは、サディをここへ連れてきた責任を感じているのでしょうか、彼女のそばにいて、容態をしきりに心配していました。
 猫のツキは、自分の居場所と勝手に決めつけているソファーをサディに占領されて、少し不機嫌なようすです。
 カラスのヨルは、特に話しかけたりもせず、ときどき観察するような目で少し離れたところから彼女を見ていました。

 サディは居心地の悪さを感じて、何か取りつくろおうと薬湯を飲みながらフレイヤに「これは魔法の薬ですか」と訊ねました。
 それを聞いて、フレイヤはいつものように薬草を仕分けしながら少し笑いました。

 「いいかい。魔法なんてものはお前さんが思ってるほど便利なものじゃないんだよ。あたしゃ、百年以上も生きてるが、魔法で怪我や病気があっという間に治ったなんて話は聞いたことが無い。魔女なんてせいぜい、ほうきに乗って空を飛ぶくらいで、他は普通の人間と大して変わらないよ」

 そして「それでもこうやって別々に暮らさなきゃならないがね」と少し低い声で付け加えました。
 サディはなぜ魔女と普通の人とが別々に暮らしているのか、まだ分かりませんでした。
 訊ねようと言葉を探していると、先にフレイヤが口を開きました。

 「その薬は魔法じゃなくて、薬草に対する正しい知識とたくさんの経験で作り上げたものだ。森で暮らす人間にとっては大事な収入源でもあるから、お前さんも魔女になろうってんなら、しっかり勉強するんだね」

 「弟子をとる気は無い」と言いながら、フレイヤの授業はすでに始まっているようでした。


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