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†涙目のサディ†
1.暗闇の森(9)

 「理由というのは、その格好だ。それにほうき。どう見たって魔女に違いない。だが、ほうきで飛んでこなかったことからすると、どうやら半人前らしい。まあ、まだ若いようだしな」

 狼はサディのまわりをゆっくりとまわりながら続けました。

 「そこで俺は、あんたがうちのご主人に弟子入りに来たのではないかと考えたのさ。ご主人は弟子はとっていないんだが、しかし、それなら一応は客ってわけだ。無事、フレイヤ様に会わせる義務が俺にはある、と思ってね」

 「フレイヤさま……」

 「そうさ、会いに来たんだろ?」

 狼が鼻づらを近づけて顔をのぞきこんだので、サディはぎょっとしました。
 敵意がないと言っていてもあまり良い気持ちはしません。
 第一、いま初めて会ったばかりの狼の言うことをまだ信用しているわけではないのですから。
 でも、食べる目的ならこんなにまわりくどいことはしないはずです。
 最初の狼よりはこの狼といるほうが――とりあえずは――安全な気がしてサディは話を合わせました。

 「え、ええ、そうよ。フレイヤさまに会いに来たの」

 「やっぱり、そうか」

 狼は自分の考えが当たっていたので少し満足気でした。

 「案内するぜ。ずいぶん弱っているようだが大丈夫かい?」

 「大丈夫……」

 サディはほうきを支えにしてよろよろと立ちあがりました。
 狼は心配そうに見ていましたが、サディがもう一度「大丈夫」とうなずくと、気をとりなおして歩きだしました。

 「ここからすぐ近くだ。狼の足ならの話だが」

 そう言ったあと、思い出したようにふり向いて言いました。

 「俺の名はシンラだ」

 「サディよ」

 「サディ(悲哀)か、そいつはいい。魔女にはぴったりの名前だ」

 狼は笑ったように見えました。



 第一章

 暗闇の森   了


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あきゅろす。
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