どこまでも(28)
仁王と柳生は、先生に呼び出された。
理由はといえば柳生になりすました仁王が悪さをして捕まったからだ。
貴方はきつねですか、と問い詰めてやりたいとこだが紳士的ではないので諦めよう。
そう、簡単に言えば柳生はとばっちりを受けたのだ。
放課後、呼び出された教室で二人、先生の到着を待つ。
柳生は椅子に座り、仁王は柳生の座っている席の隣の机の上。
「……で?私の姿で何をしたんですか?」
「………先生のヅラを盗んだナリ。」
「…なるほど。」
―――ヅラ。
つまりはカツラだ。
仁王からのアホな解答に呆れつつ納得したように返す。
「あれ?俺ンこと怒らんの?」
普段だったらすぐに説教を始める柳生がそれしか言わなかったのを不思議に思ったのか仁王は、気の抜けたような声でそう問うてきた。
「これから怒られるんです。なのに今怒られたくないでしょう?」
「……プリッ」
今の「プリ」はきっと肯定の意味だろう。
「のう、柳生?」
「なんです、か…っ!?」
会話が途切れたかと思えば名前を呼ばれて仁王の方を振り返る。
そこには唇が触れそうなくらいの近さで仁王がいた。
驚いて危うく座っていた椅子から転げ落ちるところだった。
「に、仁王くんっ!?」
「やぁーぎゅ」
相変わらずの距離の近さに仁王をぐいっと押してみるがビクともしない。
「なんなんですかっ!」
「んー…なんちゅーか、そーゆーキブン?」
仁王は左手で柳生の首筋を撫でながら怪しい笑みを浮かべる。
ふざけるなと怒鳴り付けてぶん殴ってやりたいがやはり紳士的ではないのでやめておこう。
「仁王くん…これから私たちは先生に説教をされるのですよ?なにがキブンですか…。」
「少しくらいええじゃろ?」
柳生の話など聞いちゃいない、聞くつもりも無い、といった感じの仁王は首筋を撫でていた左手を滑らせ、ネクタイを解きにかかる。
「ややや…っ、やめたまえ!!」
ネクタイがはずれる直前でなんとか仁王の手を捕らえた。
その時、教室のドアがコンコンと叩かれる。
仁王に気を取られ全く気が付かなかったが先生はもうすぐそこまで来ていたらしい。
ガラガラと、教室のドアが開いた。
「少し職員会議が長引いた。待たせて………って、お前ら…、」
教室に入ってきてこちらを見た先生がぎょっとする。
それもそのハズだ。
キスしそうな程に近付いた男子生徒二人。
驚かない方がおかしい。
「に、仁王くんっ!ふざけるのは…」
「俺はいつでも本気じゃ。」
「何をっ、んむむ…っ!?」
ガブリと噛み付くようなキスをされ、思わず突き飛ばすが完全に仁王から離れるにはいたらなかった。
それから、はっとする。
―――先生が、見ているではないか。
頼む、何かの間違いで見逃したとかそういう展開であってくれ!と先生の方をゆっくりと見る。
「にお、う…やぎゅう……?お前達、何を…」
完全に見られた。
「あ、あの、違います!その…」
慌てて訂正しようとするが上手い言い訳が見付からない。
キスしていた事は事実だし、覆す事が出来ない。
「行くぜよ、柳生。」
「え、ちょっと!仁王くんっ!?」
いきなり立ち上がった仁王に腕を引っ張られ、柳生もなんとか立ち上がるがガタガタと椅子が派手な音を立てて倒れる。
それも気にせずにぐいぐいと引っ張る仁王は教室の出入口に向かっているようだ。
「それじゃ、先生。今回の事はすまんかった!以後気をつけまーす。」
空いている方の手を軽くあげながらそう言って先生の横を通りすぎる。
「あ、あの!本当にすみませんでした!また後日お詫びしますっ!」
首だけで振り返りなんとか仁王の言葉に付け加える。
教室のドアを閉める事もなく早足で歩く仁王に引っ張られ、柳生も歩く。
もう何がなんだかわからない。
「柳生、俺ン家行くぜよ。」
「え、ええっ!?今日は父と約束が…!」
「お前に断る権利はなか。」
「そんな…自己中心的すぎま…うわっ、んっ!?」
歩いたままの勢いで引き寄せられ、強引にキスをされる。
まだ誰がいるかも分からない廊下でも気にせず仁王は唇を重ね、舌を絡めてくるのだ。
仁王の感覚にはついていけない。
「ん、ぅむ…っ、はっ、ぁ……誰かが見ていたらどうするんですか…」
「かまわん。俺いつでも比呂士が欲しいんじゃ。」
「―――っ!黙りなさい!………早く仁王くんの家に帰りますよ。」
でも、そんな仁王の言葉や行動さえ嬉しくて。
すでに全ては仁王のモノで。
ああ、もうっ…どこまでもついていってやりますよ!
(仁王くんのせいですから、覚悟しといてください…)
(なんのことか知らんがそれはこっちのセリフじゃ。今日は制御出来そうにないぜよ。俺の下で散々喘いでもらナリ。)
(……やっぱり仁王くんにはついていけそうにありません)
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お題用に書いたものなんですが再利用
柳生は言い訳を考えるのに必死になるんでしょうね(笑)
'11.2.21
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