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好き好き大好き
真っ青な空に白い雲がフワフワと。
いつまでみていても飽きない夏の空をスパナはただじっとみつめていた。
口の中の飴がカラコロと心地の良い音を立てる。
一人、ツナギのまま河川敷まで出て来た。
理由は二つ。
作業に行き詰まった事と正一と二人きりの空間に理性が効かなくなりそうだった事。
早く作業を終わらせなければならないのだが…やはり隣で作業をする正一が気になってしかたがない。
ふとすれ違った時にする匂いやチラチラと視界に映る柔らかい髪。
全てが魅力的で今すぐに襲いたい衝動に駆られてしまう。
そんな時、スパナはこの河川敷で空を見上げた。
深呼吸して、太陽の光をあびると少し気持ちが静まるような気がした。

「ごめん、正一…」

スパナはひたすらにこの気持ちを隠す。
今まで親友として接して来たのに行きなり好きだなんていったら正一は困るだろう。
嫌われるのは嫌だ。
好きになってもらえなくてもいい。
だから、嫌いにだけはならないで欲しい。

「僕、スパナに謝られる心当たりないんだけどな」

「え…?」

突然後ろから話し掛けられ、慌てて振り返る。

「しょ、正一…?!」

「ごめん、驚かせた?なかなか戻って来なかったから探しに来た。」

「ああ、そうか……」

正一は、そう言いながらスパナの隣に腰を下ろした。

「こんなところでなにしてたんだい?」

「息抜きだ。少し疲れた。」

「僕も一緒にいいかな?」

「もちろんだ。」

そこでプツリと会話が途切れる。
正一との無言の時間は不思議と気まずさを感じなかった。
むしろ心地良い。
昔は二人で黙ったまま作業に没頭していたからだろうか。

「ん……」

小さく息を漏らした正一はパサリと後ろに倒れた。

「正一…?」

その顔を覗き込めば正一は瞼を下ろし、すーすーと寝息を立てていた。


――寝てる。


「正一…」

そっと正一の柔らかい前髪に触れてみる。
くるくると指に絡めて離す。
しばらくその動作を繰り返してみたが全く起きる気配が無い。
きょろきょろと辺りを見回してみた。
昼の微妙な時間と言うことと、暑くなりはじめた気候のせいで河川敷にはスパナと正一を除いて人がいない。

「……ごめん、正一。ホント…ごめん」

すっ、と正一の前髪を上げてから軽くおでこにキスをする。
ちゅっと小さな音を立てて離れると、正一はくすぐったそうに顔を歪める。
その表情はすぐに穏やかな寝顔に変わった。

「正一…ウチ、もうそろそろ我慢出来なくなる。ごめん。」


好き、好き、大好き。


気付いてくれ、正一。
でも、気付かれたらダメだ。


もう一度さらさらと正一の前髪を撫でる。
前髪だけでは飽き足らず寝転がっているせいで広がる正一の髪を触る。
ふわふわと触り心地のいい茶色い髪はスパナの気持ちをさらに揺るがす。


好き、好き、好き、大好き。
伝えられたらどんなに楽だろうか。


正一の髪から手を離し、俯く。
どうしようもなく悲しくなった。

「好きだ、正一。ごめん……っ!」



「僕…スパナに謝られる心当たりないよ?」

「!?」

いつから目を覚ましていたのか、正一がこちらを見ながら微笑んでいた。

「今の…聞いてた、のか?」

「えー…うん、まあ。」


ああ、おしまいだ。


と、そう思った。
だが、正一の次の言葉はスパナの想像とは全く違っていた。

「す、スパナ…嬉しい。僕も、好きだ。」

俯き気味になりながら言った正一は耳まで真っ赤で、その気持ちが偽りで無いことを物語る。
そんな様子の正一に、スパナはたまらず抱き着いた。と、言っても正一は寝転がっているので正確には覆いかぶさる形だ。

「えっ、ちょっと、スパナッ!?」

「好きだ、正一。好き、好き…。」

「――――ッ!わ、分かったよ!分かってるから…!離れてっ!」

「ヤダ。ウチ、こうするのが夢だった。」

「そ、そんな…こと…っ」

すでに真っ赤だった顔がさらに赤くなる。

可愛い。

そう呟いたスパナはさらに正一をきつく抱きしめた。




(スパナ!いい加減離してよ!)
(ヤダ。)
(つ、通行人の目線が痛い…。)


―――――――――――――

ガンガン攻めるスパナも好きですが弱気なスパナもいいよね!って話しです!
それにしてもスパ正はネタが、毎回おんなじようなのばっかりで……。
ほのぼのーラブラブな技術畑が好き…です!

'10.6.24

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