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めいん
天使三成と悪魔家康
題名の通りの天使な三成と悪魔な家康の甘くもいちゃいちゃもない話ですよ…誰得?




魔族の中でも落ちこぼれ、下の下のワシに話し掛けてきたその男?俗っぽく言えば“雲の上の存在”って言う奴で。

「気に入った。私の下で働け」

と、ギラギラ熱い視線。初対面な癖に手を掴んで離さないボディタッチ(軽くセクハラ?)拒否は認めないと声高に主張する圧倒的存在。最初は新手の宗教の勧誘かキャッチセールスかと考えた。律儀に薄青のまっさらなシャツの上に白のスーツをきっちり着込み、白いネクタイを絞めていた。メガネまで掛ければ完璧だったのに。新聞受けをうろんげに眺める。いい加減次の指示が来てないか見たい。下端の下のワシは只今人間界で魂狩りの絶賛真っ最中である。成果は未だに0。こないだなんて悪人の魂を“うっかり”天界送りにして大目玉を喰らったばかりなのに。

「間に合ってます」

爽やかサンシャインスマイル(自称)で応戦すれば、色素の薄い瞳は一層輝き指の力は増すばかり。

「見込んだ通りだ。貴様のその笑顔…………しい」

ヲイヲイ最後のボソボソに聞き捨てならない台詞を聞いた気がする。乱暴に振り払い、ポストを覗き込み、空なのを確かめて角部屋へ戻る。男はしつこく後ろについて回る。非常に迷惑だ。振り向き様に鉄槌を下す。

「一体あなたは何なんですか?キャッチセールスも勧誘もお断りしてるんだが?」

耐えかねて強めの拒否を吐き出せば、男は狐に摘まれた様な顔をする。

「きゃっちせぇるすとやらでも貴様を勧誘しに来た訳でもない。喜べ、私直々に引き抜きに来たのだ!!!!天界へっっっ!!!!」

「は?……宗教なら信仰してるのありますから(邪教だけど)」

アパートの錆び付いたドアノブを回した。唐突にドアに映る影が膨らんだ。威圧感に押し潰されそうになる。否、影が膨らんだのではない。それはこの目で初めて拝む天敵とやらのシルエットだった。反射的にドアの内側に潜り込んだのは幸いだった。ぼちぼちのアルミの板が大きく凸む。

「お前何者だ?」

営業用の言葉を投げ捨てて聞く

「天の御使いだ。この手で貴様を救済してやる」

そうかこんな時に雲の上の存在って使うのか……今までの悪行(大した事はしてないが。て、言うかなんでワシの所にそんな大物来るんだ?)を思い返しつつ拳を握った。いつのまに掌は大量の汗でじっとりと湿っていた。

「ずっと……見ていた。極悪人すら救おうする慈悲の心、そして貴様の先程の笑顔は私の心を一瞬にして奪った!!私の部下そして愛人には相応しい!!!!」

耳にガンガン響いてくる騒音クラスの声に、思わず近所迷惑なんだ!やめてくれと怒鳴り付けたくなる。やっとお隣さんとも仲良くなれて井戸端会議位は出来るようになったのに。しかも、愛人とか。冗談なのは前髪位にして下さい。ホント……!!

「あれは手違いなんだ!間違って天界送りにしただけで……」

ドアの先でけたたましい嘲笑が爆発した。こいつ……天使なのか?笑い方が上司よりも普通に怖い。

「間違って?貴様、戯れ言を吐くのも大概にしろぉ!!望んでいたのだろう?人々が皆平等に救済され浄罪されるようにと」

ドアどうしようか。凸んだ箇所を意味もなく、すりすり撫でた。修理費やっぱりワシが払わなきゃいけないんだろうな〜。はぁ、今月も出費だけが嵩む。

「貴様の崇高な精神を私は買った。そして、逞しい肉体に愛くるしい目鼻立ち……ククッ最高だ!!私の好みと完璧に一致した!ああ……秀吉様、ついについに終末を共にする者を見つけましたぞぉおおおお〜!!!!」

確かにワシは悪魔には向いていないのは感じる。ここ数百年冥界に引き摺り込んだ魂なんて覚えていない程ない。反対に天界への道案内をこっそりしてる位だ。だからと言って天使になりたいのかと聞かれれば違う。やり方が気に入らない。中途半端。それが今のワシである。

「さぁ、この扉を開けろ。私を受け入れろぉおぉ!!」

ガンガン大きな音を立てながら扉をこじ開けようとする。凹ませられたんだから、そのまま打ち破ればいいのに……と思いながら体をつっかい棒にして耐えた。

「ワシは天使になんてならない。正直、お前達の行いや考え方は好かない!」

高圧な態度で一方的に行き先を決められて、拒否する余地すら与えられない。誰かにお前悪魔も同じだろ?と、正面切って言われれば困る所だが。天使達はそれが輪を掛けて酷い。自らの理想を押し付けて、自分達が全てだと言わんばかりの態度がどうも好かない。

「何、怯える事はない。私が全面的に擁護する。天界は美しい場所だぞ!!愛くるしいお前にぴったりだ!!」

息を荒くしながら南極の氷をも一瞬で気化させる勢いで熱い愛?の言葉を猛烈に語りかけてくる。聞く耳を持たないタイプらしい。正直、これ以上関わりたくない。あ、牛乳切らしていた。買い出しに行かないとな。

「震えているのか?もしや、不安に戦いているのか?……全ては杞憂だ。安心しろ。貴様を至高の幸福へ導いてやる」

扉の先の男はきっと最高のドヤ顔でもかましているんだろうか。と、想像して扉越しに視線が合ってしまった気がして更に気分が沈んだ。

「……だからっ!こちらの話を聞いてくれ!ワシは悪魔だ。高位の天使のお前が、下端のワシを勧誘する意味が何処にある?ワシには不相応だ。何もかも。頼む……帰ってくれ」

初対面の相手に愛人とか公衆でのエチケットはどうなってるんだとか、凸んだドア修理するのに幾らかかると思ってんだ。弁償してくれ、とも言いたかったが余りにアレなのでやめた。伝わってくれ。この想い、半ば祈る様な気持ちで語りかけた。すると、息を飲む気配がして暫くの間、返答はなかった。ドアの先から足音が聞こえた気がする。少し遠ざかる。やっと帰る気になったようだ。つっかい棒にした体を少々緩めた。はぁ、これで牛乳を買い出しに行ける。大家さんに現状を伝えに行ける。これでいつもの魂狩り基、天界誘導の任に行ける。溜まった息を吐き出した。しかし、こんなに騒々しい事も久し振りだった。なんだか少し淋し……ってそんな事はない。そんな事ないぞ!ワシッ!強く言い聞かせた。とセルフツッコミをいれる最中、正に天使の声が聞こえた。

「気持ちは解った……。貴様を“直接”勧誘するのは諦めよう。……私が魔王と直談判して貴様を救いだそう。待っていろ。愛しい悪魔よ」

え?……何と言ったお前?もう一回言ってくれないか?頼むからもう一回言ってくれぇぇええ!!飛び出すも、広がるのは気だるい昼間の住宅街と舞い散る無数の羽ばかりだ。力なくへなへなと座り込んだ。終わった。ワシの人生……魔生か?終わった。王とは顔見知りで一応は気に入られてはいるが、厄介者でしかないワシはすぐ払い下げられるだろう。何よりあの天使はしつこくねちっこい。どんなに門前払いを喰らっても食い下がるだろう。ワシを愛人にする為に。終わった。絶望した。今後起こるであろう様々な予知が脳裏に浮かんでは消えていく。天使の高慢な物言いと高笑いと前髪とそれから前髪と前髪と……………ぐるぐる回って。絶望した。

「奮発して海老の天麩羅と鯛の天麩羅も買うか……」

独りごちて凹んだドアの鍵を閉める。腰を抜かさんばかりの隣近所さんに軽く会釈した。足元に散らばった羽はふわりと浮き上がるも直ぐに冷たいコンクリに着地して。足は迷わずスーパーへと向かっていった。


某ふぉろわさん、素敵な企画ありがとうございました。文章力足りずにギャグに逃げてしまいも、申し訳な……。楽しかったです
(*´`*)

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