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めいん
▽▲な監禁食え食え小説。
十五禁位なんですが…
ただ食わせてるだけなんですが…









糸が切れる。ふつり、ふつり、ふつり。鋏を入れるよりも静かに、解すよりも穏やかに。

酷く心許ない。投げ出していた。とうに。

貴様さえ“ここ”に居れば、民は救おう。

と、告げられた。

解った。ならば、信じよう。お前は約束を違わないしな。

湿気を含んだ黴の匂いが鼻をつく。勿論、言われずとも如何な物を求められるかは、承知していたはずだった。
この素っ首一つで幾万もの民が救われるのならば―御の字と受け入れた。

けれど、希求されたのは首でもなければ、潤沢な資金資源でもない、況してや兵力でもなかった。
床へ爪立てる。平生の力ならば畳を穿つ位は訳ないだろうが、窪みを残す程度である。今度は伸びる所まで手を伸ばす。追従して赤い縄が続いた。指が触れる。
固い四角い柱が横へ縦へ上へ……。

なあんだ。格子の枠か。
一人合点する。と、すると定位置よりは、随分と前だ。寝転がった覚えはない。ならば―考えを止めた。目を開けるのも億劫なのだ。何もしたくない。黙って横になっていたい。

ワシは負けた。お前の座す世には、不要だ。在ってはいけない。さあ、終わらせてくれ。

穏やかに今生の幕を引けるのではないか−淡い期待すら抱いていた。
あの時は、三成の刃にかかるならば火炙りにされようが、ノコ引きにされようが、磔にされようが、充足して彼岸に行ける気がしたのだ。

結果、城まで連れて来られ、“ここ”へ繋がれた時には非常に異を覚えた。が、両日中に一切の疑問は霧散した。
躯の駆動を荒縄で封じ、地べたへ組み敷き、引き裂いたのは、妖艶に笑む友―三成であった。

何をしようと言うんだ?この命を終わらせる為に、ワシを連れて来たんじゃないのか?なあ、三成。三成。み―。

言葉は止められた。気付けば、顔に白濁をまとい久しぶりの前後運動をこなす己を薄暗い牢の中に見出だしていた。そうか……結局、この男も……。ぱきりぴしりと薄氷を踏み抜く音が、耳許で聞こえた。

ふつり、糸はそこで断ち切れた。後は、自由落下するだけ。
ひんやりとした心地の良い感触。何かが手に触れている。そして、少しばかり熱も篭っていた。薄目を開ければ、白い手が手を愛撫していた。

格子から手を離すと、鍵を開け中へ入ってくる。手足になけなしの力を込め、半身を起こし後方へ。一瞬でも近くに居たくない。
構わないでくれ、ほおっておいてくれ。
が、まるで犬を追い掛け回す子どもの瞳で、追い込むのだ。

すぐ、背は冷たい石壁へぶつかる。目の前で握り飯と水を機械的に流し込む、薄い唇。柔らかく噛み砕いた後、遮二無二に抵抗する体を縫い付け、唇と唇を重ね無理に歯と歯をこじ開けて、舌に乗せたそれを押しやった。口腔に米の甘い味が広がる。入りきらなかった米が、ぱたぱたと衣服に落ちた。

吐き出そうと、もがいて、もがく程、舌先は柔軟にまさぐる。着物の合わせを割って、乳を揉みしだかれる。顎はもう一方の手に抑えられて、動かすのもままならない。
最早ぶれる視界で捉えるのも、至極困難で。灯りの濃い影で面立ちすら、ようとは知れない。

しかしながら、瞳だけは鬼気としていて、咀嚼させるのに必死だ。顔が離れるのを待って吐こうとするも、顎を抑える手は離れない。壁に、叩きつけてくる。そうかと思えば、這わせた手をそこここへ移し感触を味わっている。

頬が痺れてきた。唾を飲むのさえ、食物が入っていれば上手く出来ない。肩口に唇を押し当て強めに噛まれた。毎度、毎度の愛撫と痛みに、鋭敏になった体がびくり震えた。刹那、喉が鳴った。

口腔内から煩わしさは消えていた。憂憤と諦念をもって据える先には、見知った面立ちがある。選択肢なんてあるはずもなかった。死すら意のままにならない。男は満足げに次の“食事”の用意をはじめた。

糸は一心に、落下を続けている。
底は未だ、見えない。

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あきゅろす。
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