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めいん
ひかりのゆううつ
月の女神、陽の男神を参照のこと。竜の旦那が主人公してます。




謀らずも五度目の舌打ちが出た。
やはり、先んじられたようだ。

ここからでも鼻頭に勘に障る気配がぴしびしと当たってくる。
目の前には雲海が何処までも何処までも広がっていき、後ろへ流した鬣が風に煽られて翻っている。左目で見上げればクソ忌々しい月が天へと掛け上がりつつあった。
最高速度で駆け抜けて来たつもりだった。足の速さならば負けはしない。彼方は地を行くが、こちらは天を駆る。分は此方にあるはずなのだ。

「Shit!」

全身を覆う鱗がざわざわと逆立った。見守りたいとな想いは汲むが役目を放ってまで四六時中付いて回る必要はないだろう。まぁ、自分も言えた義理ではないだが。髭にピリリッと良く知った感覚が触れる。神域に近付いた証拠だ。
唐突に眼前に荒い山肌が現れる。同時に雲海が遠退いていく。いつの間に銀嶺が連なる山脈を駆けていた。どうやら巧く入れた。辺りは真昼の如く明るい。けれども、光源たる太陽は見当たらない。重畳を縫う様に進み一際大きな頂を目指せば、景色は一変してくる。雪花舞い散る凍えるような山肌は消え代わりに色鮮やかな草木、花々が咲き乱れ始める。
そして、先には巨大な邸が見えてきた。太陽は暁までここで身を休める。だから、神域に太陽はない。辺りは低級の眷属風情がうろちょろしているが、一瞥くれれば面白い位に道を譲っていった。邸は鶴翼を彷彿とさせる造りとなっている。頭に当たる中央の棟には舞舞台が迫り出していた。

「……まぁまぁだったな」

着いた足の下で舞台が微かにたわんできしりと鳴る。獣の姿を解いた素足が生白く目に映った。蒼い羽織を着込むと、進んで行く。邸内にも、よくもまぁこんなにも集まったなと呆れる位の魑魅魍魎基眷属達で溢れていた。アイツのお人好し具合を体現しているいい例である。あちらこちらで酒盛りをしたり、物狂いの如く躍り狂ったり、中には賭け事に興じる者まで居て騒がしいの何のである。

「来たか。随分と遅い到着だったな」

やけにはっきりとした音が響いた。視線を巡らせれば見知った顔が鋭い目を向けている。

「生憎お前らみたいに暇じゃあ、なくてな」

連れ立って歩き始めた。“彼女”もまた人ではない。本質は三足を持つ神鳥八咫烏の長である。人型も獣型も、花もかくやな美しさを持ち合わせているが、気性は誇り高い八咫のそれに違いなかった。

「アイツは?」

「まだ、眠っている」

女物の着物を誂えて紅でも灯せば違うだろうに、この神鳥はそちらには頓着がないらしく、いつもの戦装束を纏っていた。かのお調子者の恋神が勿体無いと嘆息を吐く心情が解らないでもない。

「得心しないな。幾ら我らが仕える神、陽とは言え」

「アイツに何かあったのか?」

尋ねると、柳眉をひそめた。

「からすめ。お前達の事だ」

「Ha!あのボンクラと一緒にされるとは願ったり叶ったりだ」

さも忌々しそうに嗤ってみせた。

「庇護は時に必要だ。しかし、過ぎれば雛は飛び立たない」

「アイツは鳥じゃない。Sunだ。天辺に昇るには必要なんだよ」

オレが、と繋げば呆れた様に首を振った。

「程々に扱うのだな。甘え癖がついてまた昇れなくなっては困る」

「そしたら、ケツでも叩いて昇らせてやるさ」

「…………」

無駄だと悟ったらしい、呆れた様に一瞥すると腕を組みそれきり口を閉ざす。
何時の間に年中お祭り連中は消え果て己と神鳥以外動く物はない。周囲に開け放たれた廊からは巨大な瀑布が轟音を立てて遥か下へ流れ落ちているのが見えた。
この神鳥なりの気遣い。辛辣な物言いの中にも、労りの色が見え隠れしているのを気付いてはいる。とは言え、今は無用の長物だ。疾の癒えぬ体を押して来ているのは、自分だけではない。
寝所が近づくにつれて暖かな陽射しの香りの隣に、鼻につく別の匂いがあるのが更に明らかとなる。思わず鼻に皺が寄る感覚がして我に返った。

「あいつらは?」

「運が悪いな。其々が祀られてる社へ戻っていった」

いつもなら、巫姿の卜神と戦神である鉄巨人が“アレ”と同じくアイツにべったりのはず、なのに。どうしてこうも近い場所に居るのか合点がいった。噛み締めた奥歯が、ぎりりっと鳴る。

「ふふっ、角が出るぞ?」

神鳥の口角の片端がつり上がった。

「犬猿の仲ってか?」

「いや、不倶戴天の相手かもしれないぞ?」

「ハッ、そいつはぞっとしないな」

軈て歩は止まる。
観音開きの扉の前に辿り着いた。終点である。いよいよ以て気に食わない胡散臭い気配が溢れ出してくる。不意に握り締めた拳に爪が深く突き刺さる感覚があった。

「ここからは平気か?」

「Do not mind.野暮を言うなよ。ガキの心配でもしてるみたいだぜ?」

一瞬、虚をつかれた様な顔をして、ふっと表情を緩めた。

「そうか、そうだったな。お前達はとっくに子どもではなかったな……」

神鳥はくつくつ笑った。全く幾ら年嵩だとは言っても、この物言いは何と返して良いか困った。だから、少々斜に見つめるしかなかった。長い廊は温かな光に満たされていた。濃い影が一分の隙もなく磨き抜かれた床に落ちかかる。初めて陽に出逢ったのもここだったと古い古い記憶が揺れる。まだ、小さな手がたどたどしく開かれて黒目がちな瞳がじっと見上げていた。

「今でも充分我らから見れば“子ども”だがな」

「前から思うんだが……お前の冗談は冗談に聞こえねぇ」

「そうか?言っていないつもりだが」

「だから、性質が悪いんだよ……」

あの感覚は未だに覚えている。握った手の小ささも小さな笑窪も、秘めた決意と共に。だからこそ、あの様は絶対にあってはいけなかった。
勢い良く開け放つ。
四方に渡り雲海を挑む窓は開放されて、薄い絹が揺らいでいた。壁全てに書棚が配され古臭い経本やらカビ臭い経典やらが、隙間なく収められている。中心には巨大な天蓋付きの閨が設えられている。振り向けば神鳥は扉へ背を預けていた。今に始まった事ではないが全く趣味が悪いと言えば良いのか、心配性と言えば良いのか。

「入るぞ……」

声を掛けたんだからいいよなと、ぞんざいに踏み入る。中は端から見るよりも、広い造りになっている。ばかでかい寝台をずかずか進み、相対する位置に立つ。ざんばらの銀髪に左に付けられた眼帯。鬼が此方を睨み上げていた。

「随分と遅かったじゃねぇか」

あーさっきも言われたな。近視感を感じつつ、言葉を並べる。

「オレは忙がしいんでね。どっかの誰かより暇がないんだよ」

「奇遇だな。俺もてめぇみたいな南蛮気触れ相手にしてる暇はねぇんだよ」

じゃあ好きにさせて貰うと座せば、勝手にしろとぶっきらぼうに返ってくる。その癖、手は主の肩を領分へ引き寄せている。幸い良く眠っているらしく、目を開ける気配はない。繁々、見やれば寝姿は驚く程あどけない。普段は太陽神として崇められ畏敬を集めている、のにだ。それもそのはず。これは、先代から代替わりして日が浅い。己よりも、目の前に居る鬼よりもずっと若いのだ。長い爪の生えた手が剥き出しの肩を撫でる。危なっかしい様にくらくらと目眩がする。

「いつからここに居る?」

計らずも苛立ちが言から飛び出している。

「あ?」

「いつからこいつのお守りやってんだ?」

どうでも良いを聞くんじゃねぇさっさとどっかいけ、表情が物語る。

「ずっとだ。誰かさんが留守の間中、ずーっと」

「休みも入れず飲まず食わずで看病してたのか?」

「おうよ。それがどうした?」

ふんぞりかえる鬼をまじまじと眺めた。自然と溜め息が出た。生粋の陽馬鹿なのは解っていたがここまで来れば天晴れと称えるべきか。

「Change……だ。お前は用済みだ。此れからはオレが看る」

「俺じゃあ不足ってか?」

陽を挟んで暫し睨み合わせ、口角を片端だけあげて、大きく頷いた。

「テメェみたいな蛇に角とっ付けただけの小物には、この任は重いと思うぜ?何せ務めが手一杯でろくすっぽ来れねぇんだからな。地上を潤すのも大事な役目だが、弱った陽の傍に居てやるのも今は肝心――」

「……月の狗」

会話に挟んだ言葉は禁句だった“らしい”。ピクリと片眉が動き、ついさっきまでの饒舌さが嘘のよう。みるみる顔色が朱を帯びる。

「月の犬狗風情だったお前が随分幅を利かせるもんだな。本当なら月ん所に行って面倒な愚痴の一つや二つ聴くべきじゃ」

碇矛が空を裂く。ひょいと避わせばちちりっ、髪の先を焼いた。

「ないのか?なぁ、西海の鬼よ?」

歯噛みした左腕には炎を纏った得物を握られ、御丁寧に右腕には陽を抱えていた。

「余程死にてぇらしいな…………!あいつの事は金輪際口にするんじゃねぇっ!!!!」

激昂した鬼からはゆらゆらと陽炎の如く焔が上がった。周囲の夜具は大きく裂かれ、ゆったりと羽が舞っている。昔々とは言え己が遣えていた女神の凶行だ。これがあの鬼なりの精一杯の贖罪なんだろう。が、好意からくる謝罪も献身も行き過ぎれば只の厄にしか、なりはしない。自分だけが身を持ち崩すならばまだいいが、巻き込まれる方はたまったものではない。そして、何より此度の一件で腹立たしいのは鬼だけではない。

「Come on! 表出な。気が済むまで、相手してやる」

内心舌なめずりしながら爪を振り抜けば、蒼い稲妻が呼応して囀ずる。真正面からぶつかり合わない限りこの“バカ”は退かないし退けない。ならば、全力で相手をするのが道理だろう。此方の憂さ晴らしも目的ではあるが。蒼い炎がゆらゆらと身の内から立ち上り辺りを舐め尽くしていく。蒼と赤。触れれば爆発必至の大気が刹那歩を緩めた。特有の高揚と尊大な咆哮。彼方はここで勝負を決めたいらしい。巨大な得物の影が落ち掛かった。

「邪魔したな。すまない」

ぽん。

ぶつかり合う寸前、六爪と碇槍を傷だらけの甲が止めた。気だるい欠伸を一つぷかりと浮かべて。身一つの体に公孫樹の実色の羽織を纏い、でかい寝台から抜け出ようとする。鬼を見れば振りかぶった体制のままに固まっていた。勿論、右腕には誰もいない。

「す、まなかった!!起こしちまったか!?」

翻すと間髪入れずに謝罪を始める。先程まで修羅を体現していた鬼がまるで別人である。今は親の機嫌を伺う子にどうしても見えてしまう。

「平気だ……少し騒々しかったが」

拗ねた物言いを聞けば、珍事に目が自ずと細くなった。あー怒らせたな。陽が自らの率直な感情を述べるのは非常に稀だから。これは面倒だ、と察知した。キンと得物を仕舞えば鬼が平身低頭していた。

「あれからずっと寝てばっかじゃねぇかっ!?心配っなんだよっ!だから……」

「ワシは心配ないと何度も言っている。お前も休め。体を壊すぞ?」

補足する。相当キレてやがる。物言いは穏やかだが、完全に目が笑ってない。余程堪えたと見える。本来は馬鹿が付く程のお人好しである陽が怒り心頭とは。他の取り巻きが居ないからこれ幸い、と四六時中悔恨の言葉やら愛の言葉やら無駄に触り続けながら囁き続けたんだろう。うんざりして狸寝入りでも決め込んでいたのかもしれない。そしたら、今回のドンパチ騒ぎ。そりゃあ緒も切れる。もし、自分だったらと考えれば抜刀込みの物騒な見解に行き着く。確かなのは一つ。
今は出来れば話し掛けたくない。

「よぉ。思ったよりも息災そうだな」

「独眼竜も相変わらずだな」

だから目が笑ってねえって。全身から立ち上る含みの隠った陽炎を視界の端に追いやる。さて、怒りをどう鎮めるか。ここはまず気乗りはしないが鬼と協定を結び、然り気無く会話を行い無難に退室。ほとぼりが冷めるまで酒でも煽ればいい。

「頼む!!一緒に居させてくれっ。不安で不安で仕方ねぇんだよ。お前は平気なはずがねぇじゃねぇか!!」

鬼は必死に食い下がった。陽の肩を揺さぶる。一体何処の姫さんだよ。どんな理屈だよ。鬼神の狼狽困憊振りを見物に来た訳ではない。煽ってどうする。鬼との協定は最早頓挫した。

「だから……ワシは一人の時間が欲しいんだ。気持ちは嬉しいんだが…………居なくなってくれ」

杯の縁から零れ落ちそうな理性を御しながら、必死に答えている。その上、笑顔のままに瞳だけは、真冬を照す凍てついた陽射し。鬼の胆は確実に握り潰された。……ようだ。手を離し顔面蒼白になっていた。この時ばかりは同情の余地すら覚えた。

「と……言う訳だ。来て早々申し訳無いが、お前も外して貰えないか?」

「All right」

頷けば怒気の色は少々和らいで。緩やかな変容の中に未だ子どもらしさを見出だして、張り詰めた意識も余裕が生じる。相手を気にかけ過ぎて自らを上手く顕せない気色がある陽だ。そんな年相応な対応も嬉しくもある。
まぁ、鬼を連行出来る大義名分が出来たのも喜ばしくあるが。

「ここは大人しく引っ込むのが定石だろ?なあ、鬼さんよ?」

肩に手を掛けた。
数瞬遅れてぞんざいに返事があった。自業自得だ観念しな。と、労いと愉快を少々込めて肩を叩く。
何人にも独占されてはいけない存在。太陽は不可侵の証でなければいけない。月の女神の腕に懐かれる為にも、鬼神の傍で眠る為に輝くはずもない。等しく一を、百を、千を、万を、照らすのが務め。そうでなければ、そうでなかったならば―間違いなく。

「話はついたようだな」

神鳥がいつのまに姿を現していた。帰ってなかったのかと毒づけば。我等が関わるまでもないと踏んでいたのだが事の顛末を見守りたかった。とな、優等生な回答。最初から神鳥が居れば、この案件は妙な拗れを見せずに解決出来ていた。
釈然としない。

「こうなるのは折り込み済みだったんだろ?」

「当人の問題だ。軽はずみに嘴を挟むのは愚でしかない」

「泥沼も黙認ってか」

「ふふ。負けず嫌いだな。嫌いではないが。大体最初に言った筈だ。『過ぎれは雛は飛び立たない』と」

ここで初めて陽に向くと、

「そうだろう?」

言葉を投げ掛けた。当然、的を得ないようで疑問符が浮かんでいる。

「誰しも物思いに耽る時は孤独を共にしたいものだ。特に懸想の邪魔とは、間が悪い」

ちらと元凶へ冷えた空気が流れた。刹那、拍動が軋む。胸を貫いたのは確かに一筋の冷たい光り。おい…………まさか……。ぎこちなく太陽へ面を向ければ、大きく目を見張っている。序に頬も昨今試しがない位に鮮やかな朱を帯びていった。そのままふいと、下を向いてしまう。
しかも、否定も肯定もしない。鬼は今度こそへなへなと膝から崩落する。重篤だ。手が自然とこめかみを強く掴んだ。こいつは全く笑えない。立ち眩んだ視界をなんとか支えれば、

「お前らも祝ってやれ。陽の門出を」

「What!? 聞き捨てならねぇ冗談だな。…………お前を拐かしたんだぞ!!」

「それは関係ない。あれはワシを好いてくれていたからこその、行動だったろう?もう決めた。明日、第六天公にこの旨を伝えに行くよ」

このままにはしておけない。しておいてはいけないんだ、例えもう会えなくても偽らざる気持ちを伝えなければいけない、毅然とした口調で続けた。
けど、この口上をオレはろくに聞いていなかった。太陽を穴が空く程に見つめていた。多分、忘れないだろう。こんなにも晴れやかな姿を。いや、忘れて堪るか。陽を幼少から見守り育てたのは他ならぬこの己なのだ。
ぽっと出の月の女神にみすみす渡すものか。絶対やるか。いや、絶対やらねぇ。内心雷雨を轟かせた。
やおら、鬼神がゆるりと立ち上がった。虚ろな隻眼で辺りを一瞥するとふらり近付き、柔らかいであろう唇を喰んだ。あろう事か陽の、唇を。想定外の事態に固まった頸に手を回し重ね続けた。

「な……な、てめぇっっ!!」

慌てて引き剥がせば、ぽつり一言。

「消毒だ」

「Ah゛゛っ!?」

「あの女神にやる前に消毒だろ。唾つけときゃ、俺の物って言うしな」

はたと見直せば瞳に鋭い光が戻り、得意顔を見せている。止めに片目を素早く瞑って見せた。

「災難だな。心中察する」

神鳥は果てなく生温い瞳で珍事を平睨する。それはそれはもう生温く。音の根を止められた太陽は困惑気味に鬼を神鳥を見返す。形の良い眉尻を下げ、控え目に顎から唇へと触れた。
―何かが切れる音がした。
むんず掴むめば、寝台の端まで引き摺る。そのまま乱暴に投げ、のし掛かった。共襟から手を忍び込ませ、残った方で両腕を押さえる。

「ど、独眼竜!?」

「保護者面すんのもヤメだ。糞忌々しい女神の所に行くのは止めろ。それでも行くってんなら、務めにも出れない体にでもしてやろうか?ま、安心しな。優しく手取り足取り教えてやるよ」

弾力のある感触を楽しみながら、首筋に顔を埋めた。ひちゃぺたと舌を這わせれば敏感に震えた。

「いぁ……た、頼む。誰か」

「ほー俺抜きで楽しもうってのかっ!?混ぜな」

「……失せな。充分楽しんだろ?」

「誰か、助けてくれ〜」

「本番まではいってねぇだろがっ!!寄越せ!!」

「No!コイツはオレのモンだ。指でもくわえて、そこで見てな!!」

「っふざけんじゃねぇ!!それからもっと丁寧に扱え!病み上がりだぞ!!」

「強引に扱わないとこの手のはすぐ逃げるからなぁ。間断なく次の手次の手出して行かないと」

「このど淫乱野郎!!」

「てめぇみたいな陰険助平に言える義理はないと思うぜ」

「なにをっ!!」

「なあこれって貞操の危機とやらなのか?」

「ああ、お前であれば童貞消失の危機だと…………思うがな」

妙に冷静な会話を端に挟みながら、共襟を深く割り耳元へ熱く囁く。

「ご託はいい。大人しくとっとと喰われな」

はっと此方を見た表情を今度は来世すら忘れはしない。やっと抱き締められた愛しい暖かい日溜まり。思いのままに唇を貪った。



それから、神鳥と陽が召喚した鋼の戦神によって室から仲良く叩き出されたのは語るに落ちて。


オレは廊の真ん中で六度目の舌打ちを空に放った。







政宗と元親の会話ってむずい。あと、孫市ねーねも。

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あきゅろす。
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