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まぜまぜ。
☆ドロシアソーサレス(ネタ注




《ここは……どこ?》


 暗い何処かで声がした。
 透き通った女性の声。
 だがその声にはノイズが混じっている。
《どこ…なの?》
 声は悲しそうに言うが返事をするものはいない。
 いや、この場合いなくなったの方が正のかもしれない。
《あ……》
 ふと声が小さく言う。
 すると何処からか月のような静かな光が入って暗い場所を照らした。
 照らし出されたのは何年も置き去りにされていたのだろう、埃を被った無惨にも破られた絵や折られた絵筆、壊れた椅子などが床に転がっていた。
 だが、そんな荒れ果てた部屋の壁に一つだけ破かれていない絵が飾られていた。
 藤色の服に包まれた空色の髪をしている魔女のような綺麗な女性の絵。
《これは……何?》
 するとその絵から先程の声がした。
 声がしたと同時にその絵からゆっくりと藤色の服に包まれた空色の髪の魔女が出てきた。
 魔女が出てきたあとにはその絵には何も描かれていない。
 魔女はふわふわと宙に浮きながら振り返り、先程まで自分がいた絵を見つめた。
 ふと魔女は絵の下に小さなプレートがあることに気付いた。
 プレートには何かが書かれているようだが埃のせいでよくは見えない。
 魔女は空色の髪を一部、手のようにしてプレートについた埃を拭い取る。
 綺麗な空色の髪が拭った部分だけ埃で黒くなるが、魔女はそんなことはお構い無しにプレートに書かれたことを読む。
《ドロシア…ソーサレス……私が…今まで描いた……絵で…最高…の……作品…》
 魔女はプレートに書かれたことを読み終えると振り返り部屋全体を見渡した。
 部屋は相変わらず埃を被った壊れた道具が月のような静かな光に照らされ、廃墟同然である。
《……あ…》
 すると突然、部屋が白い光に包まれた。
《…》
 光がなくなると荒れていた部屋が嘘のように綺麗になっていた。
 窓からは太陽の日差しが差し込み、破られいた絵は壁にかかって折られていた絵筆は筆立てに立てられていた。
 床は埃がなくなっているが所々にいろんな色の絵の具がついていた。
 そのことから画家の部屋だということが分かった。
 とても暖かく綺麗だったが現実にあるものではなかった、その証拠に魔女が近くにあった椅子に触れたがそれはすり抜けた。
 おそらくこれはこの部屋の記憶なのだろう。
 魔女は辺りを見渡したあと、後ろを振り向いた。
 魔女が出てきたことで何も描かれていなかった魔女の絵にはまた魔女が描かれており、前に一人の青年が半透明の姿で魔女の絵に笑顔で何かを話していた。
《…誰?》
 魔女はその青年を見て呟く。
 暫く青年を見つめる魔女は自分の中で何か暖かく懐かしいものを感じた。
 それから部屋の記憶は早送りのように月日を流す。
 魔女はそれを黙って見ていた。
 ふと魔女はあることに気付いた。
 月日が過ぎるにつれ青年は前のように魔女の絵には笑顔を見せたり話しかけたりしなくなっていたことに。
《……寂しい…》
 魔女は呟く。
《何で見てくれないの?》
 魔女は自分の絵を見てくれなくなった青年に涙を流した。
 だがその涙は青年には届かない。
 そう分かっていても魔女は泣き続けた。
 すると先程まで早送りで流れていた記憶が止まった。
 その記憶では、部屋の真ん中で青年が立ち足元には破られた絵や折られた絵筆、壊れた椅子が無惨にも散らばっていた。
 そして青年は言った。
「最高傑作を……もっと素晴らしい作品を……」
 そう言って青年は部屋を出ていく。
 魔女は青年の言葉を聞いて出ていく青年に泣きながら言った。
《待って!私が最高傑作じゃないの!?私が今まで描いた絵で最高の作品だって言ったじゃない!》
 しかし魔女の言葉は青年には届かず、部屋は荒れ果てた先程の廃墟同然の部屋に戻った。
 魔女は泣き崩れ、その泣き声は次第に笑いへと変わった。
 自分を忘れられた悲しみは怒りへと変わり、青年に抱いていた心は憎しみへと変わる。
《……許せない》
 自分を忘れた者へ怒りを、自分を捨てた者へ憎しみを。
 それは魔女の中でふつふつと沸き上がり、魔女の周りには黒い霧のようなものが立ち込める。
 黒い霧は次第に折られ埃を被り床に転がっている絵筆に集まり、絵筆は黒と白の二本の魔法の絵筆と変わった。
《もう………忘れさせない》
 魔女がそう言うと魔女と一緒に二本の絵筆と壁にかかっていた魔女の絵は廃墟の部屋から消えていた。
 高らかな笑い声のこだまを残して。





 魔女は荒れ狂い、世界を自分と同じ絵画へと変えていった。






 忘れられるほど……この世に怖いもの悲しいものなど在りはしない………。





 それは、魔女ドロシアソーサレスのように忘れ去られていたものに命を与えてしまうのだ。

















作者の呟き

ブログに載せたものをそのままコピーしました。
オリジナル設定ですがなにk(殴
とりあえずタチカビのプロローグ的なものと思ってください。
今書いているオリジナル小説が完結したら書こうかなぁ〜って考えてます。
……いつになる話やら………(汗





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あきゅろす。
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