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君はうたかた
日常生活



「明ぁー次移動教室だって!」



廊下からひょいと顔を出した男子生徒が、自分の席でぼけっと宙を眺めていた俺を呼ぶ。

木ノ瀬 明(コノセ アキラ)。

高校二年、16歳。

顔普通、体型標準、身長171cm。
性格はマイペースというか、気ままというか。
良い意味で言えばおおらからしいけど、特に仲のいい友人からすればただの面倒くさがりだろって話し。

まぁ、平凡ってコトで。



「あーきーらぁ!てめっ、人がわざわざ教えてやってんのにちゃんと聞いてんのか!?」

「…あ。ごめん」



全然聞いてなかった、正直にそう告げれば肩を落とされる。

可哀相に。

彼をうなだれさせたのは自分なのに、さも人事のようにして次の授業の教科書を探す。

あと1時限でお昼ご飯。

お腹の虫よ、今少し耐えてくれ。
さっきからくぅくぅ煩いヤツを宥めながら席を立つ。



窓際の俺の席からは校庭と、校門に続く並木道が見えた。

病院を退院して、学校復帰してから早ひと月。

一列に並ぶ桜らしき木々たちは、すっかり木の葉をもぎ取られ、裸の寒々しい姿を晒していた。



「そいや移動何処だって?」

「…お前な」



キョトンとして尋ねた俺に、彼は呆れた眼差しを向けてきた。

吐かれた溜め息が重い。

肩を慰めるようにポンポンと叩くと、「やめれ…」と弱々しい声が返ってくる。


そこでチャイムが鳴った。


お前のせいだ、いやお前だ。と言い合いながら走る俺らは勿論遅刻して。

罰として立たされた廊下で、彼と二人同時に吐き出した大きな一息は、白く染まって空気に溶けた。



秋は過ぎ、すでに冬の季節が到来していた。

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あきゅろす。
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