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妄執教師
仁科の希望

孝司の監禁部屋から出てきた仁科は、今日も苛立っていた。

仕事を早めに切り上げた片山が、様子を見ようと部屋に近づいた所、偶然仁科と出くわしたのだ。

2人は今、1階の簡易キッチンで淹れたコーヒーを飲んでいる。片山は仁科の様子をうかがった。

最近の仁科は、ボーッと虚空を見つめることが多い。孝司の部屋に行くときだけに羽織る白衣も、今は無造作に椅子に掛けられている。

片山は仁科が何を考えているのか、ますます分からなくなった。

「……啓一に会いたい」

コーヒーを飲んでいた片山の手が止まる。一度カップをテーブルに戻し、仁科へと問いかける。

「まさか、啓一を連れてこい、とか言うんじゃないだろうな」

それは片山が一番危惧していることでもあった。

そんな事態になったら、今まで代用品だった孝司はどうなってしまう?

仁科の話では、彼のアパートは解約済みだと聞いた。帰る場所はなくなってしまったし、それ以前に今の孝司は、仁科から離れられないだろう。



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