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妄執教師
抵抗の証
「足枷を解いたのは片山だ。合鍵は彼に託してある。それを使って、片山は長瀬くんを連れ出したのだろう」
 そこまで語った後、仁科は口を閉ざした。細い指は枷の淵を巡り、かすかに残る血液を絡め取る。
「この血は長瀬くんの抵抗の証だろうね」
「抵抗?」
「さっきも言ったが、長瀬くんは解放されることを望んでいない。彼が自らの意志でここを出たとは到底考えにくい」
「何故そう言い切れる」
 啓一には弟の思考回路が分からなくなっていた。自分を監禁した相手に依存しているとして、何故こうも自由を拒むのか。ただ、その答えは加害者である仁科にも分からないようだ。彼は視線を伏せたまま思案し、やや経ってから口を開いた。
「この数週間、私は彼と共に過ごしたからだ」
「……っ」
「肉体的にも性的にも私は彼を暴行した。彼が私に抱く好意は、彼が無意識のうちに放った防衛本能だったと思う。私に好かれれば優しく扱われると、彼は学んだんだ」

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あきゅろす。
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