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妄執教師
消失、その痕跡
 長瀬啓一(ナガセ ケイイチ)は自らの苛立ちを表すように壁を殴った。
 ようやく辿り着いた弟の行方が、また分からなくなってしまったのだ。しかも弟を拉致したと思われている仁科智(ニシナ サトシ)は、呆然としたまま壁を背に座り込んでいる。彼もまた目の前の光景が信じられないようだ。
 久しぶりに会ったかつての友人は、こちらが心配になる程窶れてしまっている。だが今の啓一に、彼を気遣う余裕はなかった。
「立て」
 啓一は仁科の腕を掴み、立ち上がらせると、無機質な部屋に連れ込んだ。そのまま壁際のパイプベッドまで引きずり、シーツに投げ出された鎖を掴んで言った。
「これは何だ」
「足枷」
「こんな物でお前は孝司を繋いでいたのか!」
「……少し違う」
 仁科は啓一から足枷を受け取り、その内側を撫でながら続ける。
「最初は彼が逃げ出さないように繋いでいた。でも途中から彼自身がそれを望んだんだ」
「孝司が繋いでくれとでも言ったのか…!?」
「そうだよ」
 足枷の内側には僅かに血が滲んでいた。孝司が無理に足を引き抜いたのかとも思ったが、それは考えにくい。なぜなら枷の鍵が開いていたからだ。

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あきゅろす。
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