9

「ハートのジュエル?」

「そうだよ」

「きみが好きだ」

それは西山にも伝えていない、ナミからのメッセージだった。
セリフのようにさらっと、花木の整った口元からその言葉がこぼれた。

発した本人は涼しい顔をしているのに、元々赤い浪の頬は、更に火照っていく。
心臓を鷲づかみにされてしまったように手を動かすこともできず、ただただ目の前の美しい男の真剣な瞳に魅了されていた。


「ノラクエ3の時は小学生だった。早朝、大人たちにまみれて、オヤジが俺と同じぐらいの子供がいるってかわいそうがって少し早く開店したんだよなあの時。
4の時は中学生、中学で同じ中学になれるかなって思ったけど、5つ離れた駅だったんだな。いないわけだ。高校でやっと会えた。」

「そんな」

「長い片思いだよ」

信じられなくて、呆然と突っ立ったまま、ひたすら目の前の卓斗を見つめてしまう。

「そんな見るなよ」

そう言う卓斗こそ、目を離そうとしなかった。

「で、主人公を俺にした真意を聞かせてもらえないかな」


卓斗の瞳に自分が映っている、それを見つめたまま、意を決して浪は口を開いた。


「か、勝手にごめん、でも誰にでもやさしくて、クラスの中心にいる花木は、俺にとって勇者みたいなものだから」


極度の緊張からカラカラになった口から出た言葉は、かすれてしまっていたけれど、そう必死につむぐと、今まで動じなかった卓斗の顔が急にぶわっと赤くなって、本当に嬉しそうに目を細めた。

それを見て浪は只漠然と、花木が俺のことを好きって本当なんだ、と思った。


「そっか、俺今すげー嬉しい」そう言うやいなや、浪を抱きしめる力強いぬくもり。すっぽり抱きしめられた浪は、卓斗の胸元に耳を押し付けて、少し早い鼓動を聞きながら、「俺も」と小さくつぶやいた。こんなに近くにいる卓斗には聞こえたようで、更に強く抱きしめてられた。

夕日で照らされた2人は、そうしてしばらくの間ずっとそのままでいた。


<<*前 次#>>
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!