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「そう。あれ俺ん家なんだ」
「ええっ」
合点がいった。
考えてみれば、名前がそのまんま花木だ。小学生の頃から通っていたおもちゃ屋なのに、今頃気づく自分のうかつさに改めて凹む。
それに、ナミはあの時浪が着ていた格好をしていた。白いトレーナーにジーンズ、青いマフラーを巻いて寒空の下、ノラクエ発売を待っていたあの時の。
「帽子深く被ってたけど、予約してただろ。名前書いてあったからすぐ分かったんだ。同じクラスだけど、岸上と接点なくて、どう話せばいいか分かんなかったから、ナミを作って、すれ違い通信利用したんだ。我ながら似てただろ」
ナミのことを言ってると頭でわかっていても名前を呼び捨てにされるとドキっとしてしまう。
おずおずと見上げた先に見えたのは、画面上でよく見るやさしい笑顔だった。
ゲームのタクトも格好良いけど、現実の卓斗の笑顔の方が何倍も格好良かった。
「でも、岸上も俺と同じ気持ちってことだよね」
「え?」
「タクト。初めてみた時はびっくりしたよ。岸上とすれ違いたいと思って地元の駅で待ってみたけど、まさか俺をモデルにしてくれてるなんて」
卓斗にはっきり言われてしまい、浪は顔が赤くなっていくのを感じた。
もう終わりだ。
「ごっ―」「で。俺の気持ちは届いたかな?」
ごめんと謝罪の言葉を口にするより早く、卓斗が声を発した。
"きもち"小さく口を動かす。きもちって――
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