ねこと俺の攻防1

ガチャン



いつも通り19時も過ぎた頃、スーパーの総菜を片手にドアを開けると、まるでずっとそこにいたような風情でちょこんと玄関に座っている銀色の毛玉が目に入る。

「なんだ?お迎えか?」なんつって靴をぬごうと屈んだその時、おもむろにねこがその場で横になった、ポスンと。


「ッ!」


やつが寝転がって占領しているそのたたきは、俺が今から靴を脱いであがるんですけど…と思いつつ、ねこを見やると、絶妙な流し目をして俺を見る瞳があった。


こ、これは……!


ねこのくせに仄かな色気すら漂わすそれに抗えず、おそるおそる手を伸ばすと、素晴らしく良い毛並みに触れる。
ねこはそんな俺をチラ見して確認したのち、俺の手への意識はそのままに、あさってのほうを向きながらゆっくりと体の力を抜いていった。口元がかすかに緩んでいるような気がするのは俺の気のせいか……。
分けも分からず、背をなでる手を止めると、あさってを向いていた顔がとたんに俺の方を向いて不満を訴えるので、俺はやつの気の済むまでせっせと背中をなで続けるのだった。


なでるあまりにおざなりになっても、さっきのかわいい顔はどうしたといいたい程の鋭い眼光でにらみつけてくるので、「こうなりゃやけだ」と、気合いを入れてわしゃわしゃとねこをかき回す。
かといって、調子に乗ってお腹の下に手を入れてしまうとどうかっていうと―――んにゃにゃ!とねこパンチが飛んできて、俺なんかいなかったみたいに、見向きもしないで、ぶんぶんしっぽを回しながら寝室に帰っていった。

なんだったんだ…、と未だタタキに屈んだ状態のまま、ねこの後ろ姿を見送る俺だった。




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