七夕SS 後編

翌日、すっかりガンガンする俺の目の前に現れたのは、上機嫌で素麺を茹でる河東だった。野上はというと朝一で帰ったそうだ。酒を飲んで酔っ払うことはあっても二日酔いすることはない、羨ましい体質だ。

「はい」

「サンキュ」

もくもくと箸を動かす。やはり夏の素麺はうまい。
しかし昨日はどうしたんだろう。たしか飲みながら段々ヒートアップしてしまい野上と短冊を書きまくって、それから――――


「あ」

河東が座った真後ろ、笹が立てかけられている1番上のさきっぽに、青い短冊がくくりつけられている。あれは、昨日…野上が寝た後に書いた短冊だ。

河東が目にする前に隠そうと、勢い良く立ち上がると、思いのほか二日酔いの頭がガンガンと響いた。
ふらついた身体を後ろから河東が支えてくれる。ふわり、いつもの柑橘系コロンの匂いが香る。腰に回った腕に力が入って、ぎゅっと抱きしめられたような体制に、一気に体温が上がった。

身動きの取れないまま、それでも何とか短冊に手を伸ばすと、耳元に寄せられた唇から甘い声が響く。


「残念、それはもう昨日見たんだ」

「っ」


それから、河東に抱えられたまま、冷たい指先に顎を取られて振り向かされると、河東の端正な顔が降りてくる。長い睫が伏せられて、あ、キスだ、と思った時には既に唇に柔らかい感触がした。

ちゅっと軽い音が何回か響いたあと、するりと入ってきた熱を含んだ舌に翻弄される。

「んっ」

息が切れ、ガンガンと警告音が鳴り響く。
…やばい


「かっ、河東、俺、もう……はぁ」

「もう?」

俺の異変に気づいて、キスを止めてくれた河東の、熱を含んだ瞳が至近距離で俺を見つめていた。

こいつ近い、近いんだよ。美形のどアップっていうのは予想以上にくるもんだ。しかも二人の唾液で塗れた唇は少しでも動いたらくっついてしまいそう−−−そのあまりのエロさにくらっとなりながらも、これだけは言わなくてはと、自分を奮い立たせた。


「………は、吐く!」









結局、トイレに直行し、その日一日ベッドの住人となった俺を、せっかくの休みだと言うのに、河東はねこ共々甲斐甲斐しく世話してくれた。


" 河東ともっと一緒にいられますように "

必死に隠した青色の短冊は、俺のおぼつかない字の隣に、ちょっと角ばった綺麗な字で、

" 南田とずっと一緒にいられますように "

そう書かれていた。




おわり


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