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ちゃぶ台の下に弾いていた座布団を、発泡酒の入っていたダンボールに無理やり押し込める。即席で作った割に、ちょうどねこが納まりそうな大きさに満足すると、それを台所の隅へ置いた。

「こんなもんでいいだろう?」

それまで熱心に俺を追っていたねこの視線は、すっとあからさまに外された。


「・・・・・・くそっ」


路地で出会った時よりよほど、ねこの表情は豊かだった。
人見知りでもするんだろうか。いや、この場合は外面がいいってやつだな。。。と邪推なことを考えて小さく笑うと、気のせいか、こっちを観察するねこの瞳も若干細くなったりするから恐ろしい。
脱衣所にある収納棚の一番上を漁って、大き目のフェイスタオルを持ってきた。引き出物で貰った絹の糸とかいう、常備している1枚290円のタオルとはわけが違う、おそろしく肌さわりの良いフェイスタオルだ。若干もったいない気もしたが、それをふわっとかぶせる。
これでどうだ我ながら完璧だ。


「とりあえずこんなもんでいいだろう。
お前の寝床は、ここにあるから、そこからどいてくれないか?」


そう、ねこは俺のベッドのど真ん中に陣取って、ずっと俺を見つめていたのだ。
やつは俺をチラっと一瞥してから、あくびをして、ゴロンと横になった。ねこに詳しくない俺でもわかる、お前そこで寝る気だな?

シーツに爪を立てて意地でもどこうとしないねこを、実力行使とばかりに無理やり抱きかかえてフェイスタオルの上に着地させる。

「どうだ!気持ちいいだろう。お前の寝床はそこ。俺は寝るからな。」

言うが早いが、キッチンと寝室を隔てる引き戸をピシャっと閉めて、ベッドにもぐる。
カリカリという引き戸に爪を立てる音がするが、無視だ、無視。




ねこを拾ってしまった。
それも、ものすごく美しいねこを。


今日1日ですっかり俺の部屋に馴染んだあいつの心細そうな顔を思い起こしているうちに、いつの間にか俺は眠っていた。


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あきゅろす。
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