また会える日まで
ご
そのままぶらぶらと家へ帰ると、
勝手にソファーに寝転がった。
今の俺の身長にはどうやらこのソファーは小さいようだ。
ソファーから足がはみ出るかたちとなった。
そのソファーからはみ出る足を見て、大翔は満足する。
あと10年たてば自分もこの身長になれるのだ。
嬉しくてしょうがない。
口元が上がるのを我慢する。
「おい、人の家に泊まるならなんか手伝え。」
上からぱこん、と軽くなにか柔らかいもので頭を叩かれた。
そのまま寝転んだまま頭上に視線を移すと、相変わらず女、男からも認められような綺麗な顔で覗き込んでいた。
「波留……、」
「?なんだ?」
ぐっとその細くて白い波留の手首を掴んで見つめる。
そういやねーちゃんがいっていた。
自分が気に入ったものは男でも女でも絶対に手放すな、と。
そんなことはわかっている。
絶対に手放してなんかやるか。
いまいち状況が掴めていない部分もあるが、これはチャンスだ。
このチャンスを逃してはいけない。
「・・・・・・手伝ってほしいんですけど」
じっと手を掴んで見つめてそのまま何も言わない大翔に戸惑いながらも波留は言った。
「……うん。何すればいい?」
「野菜切って」
「わかった」
***
「取り合えず、にんじん。洗って、皮剥いて、小さく切って。」
「わかった。」
「その間に俺は肉炒めとくから」
「はーい」
ジューっと肉が焼ける美味しそうな音がする。
「にんじん切れたか?」
「………、」
「っておい!にんじんほそっ」
見ればにんじんの皮というか、
一本のにんじんからはまるで取られないほどの量の皮が、流しの中にぺらぺらと散らばっていた。
「にんじんもったいねぇ」
身まで剥かれた細長いにんじんがまな板の上に置かれており、なんとも不様な姿だった。
「って、その切り方あぶねっ」
大翔はその可哀想なにんじんに向かって両手で包丁をもって切ろうとしていた。
「へ…?」
「包丁は片手で持つもんだろ。普通…」
「固かったから」
いやいや、そのにんじん細くなってだいぶ切りやすいと思うが。
「家庭科の授業で左手は猫の手って習わなかったか…?」
「………猫の手…?」
「だから、こう。」
「ほお、」
「こうしたら怪我しないだろ。」
タタタと高速ににんじんを切っていく姿を見ながら大翔は感心する。
「はやー……」
「こういうのは慣れだからなあ」
「へー」
「料理しないのか?」
「する」
「じゃあ、なんで野菜が切れない」
「野菜は切らない。」
「ん?」
「カップラーメンとか…」
「いや、それ料理じゃねーよ。」
「そうなの?」
「……ああ、取り合えず料理が全く出来ないことはわかったから、もうソファーででも寝てろ。」
「えー……」
「いいから」
「手伝う」
「いーから寝てろ」
「……わかった。」
悲しそうにしゅんとしながらソファーに向かっていく大翔を見て、なんだか体はでかいのにいちいち小さい子供というか、動物みたいだなあ、と思いながら波留は料理を再開した。
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