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また会える日まで
いち


ひとり、小学生の男の子がノートをもって駆け付けた



「波留せんせー、ここわかんない。」

「はー?どこだよ?」

「この問題」

「あー、ここは―――で、―――だよ」




「――――………ねえー、波留せんせ?」




「今度はなに」

心底めんどくさそうに答えた。

「せんせーはバイなの?」

「ぶっ!!お前それどこで覚えたっ小学生どころか中学生も知らない言葉だぜ?」


「ねー、なんて意味?」

「は?それどこで教えてもらった?」

「ねーちゃんが言ってた」

「お前のねーちゃん…」





「ねーどういう意味?」

「………男も女とも付き合えるって奴のことだ」

「せんせーはバイなの?」




「………さあな」

「でも俺先生のこと好きだから」

「俺が好きなのかー、ありがと。ひろ、」

わしゃわしゃと頭を撫でられる。

「意味わかってないでしょ」


「え?もしかして恋愛感情としてとか?」

「…うん」

「ふっ、あんまり大人をからかうなよ?」

「そういうと思った。じゃ、俺帰る。雨降ってきたし。またね、波留せんせー」

そして黒いランドセルをヒョイと背負うと、塾の教室を飛び出した。

「雨降ってきた……?」

ポツポツと雨はふりかけていて、曇天の空を見上げた。

「今日も傘貸してあげないと」


ああ、今日も波留先生は綺麗だったなあ…と思いながら傘をぐるぐる回しながらさして歩いた。

細くて、黒い髪もさらさらで、女の人みたいにというか負けないくらい綺麗で、かっこいいっていうより、やっぱり綺麗だった。

女の子にも人気があるし、たまに男の人も振り返るくらい綺麗………という話をよく他の塾の先生から聞く。

でもさ、俺はまだ小学生だから相手にされない
あと10年もしたら20歳なのに。そしたら波留先生は30歳かあー。

はやく大人になりたいなー


「ついた。」

塾の帰りにいつも会うお地蔵さん。
鞄の中に入っているチロルチョコを取り出し、石の上に置く。
そして折りたたみの傘を広げて置いた。

「いつもの傘と、これ、おすそわけ。」

ふう、とため息をついて、パンパンと手を合わせて目をつぶる。

お地蔵さんって子供の願いは叶えてくれるんだよね。

心の中では波留先生と両想いになれますようにと何度も思った。


「・・・・ねー、俺、いつもいい子にしてるよ、ね?お地蔵さん。いつも塾の帰り道、雨降ってたら傘かしてあげてるし・・・・・ちょっと1日ぐらい大人にしてくれてもいいと思うんだ。」

目を開けると、もうひとつ鞄の中に入っているチロルチョコを食べた。

「んー!やっぱおいし。」


その瞬間、雨の中、傘を持った少年がひとり、小さな地蔵の前で傘だけを残して消えた。



―――――――――――――
――――――――
――――



いつの間にか俺は神社のベンチで寝ていた

むくりと起き上がると、
いつもより視界が高くて、
しかも広く感じた。



ここどこ?




「迷子になった…?」


声を出すと、自分の声が低くてビックリする

風邪ひいたのか…?


「すいません、誰かいませんかー……」


やっぱり声が低い
それになんか身長がすごく伸びてる気がする


夢………?


とりあえず神社には人がいないようで、俺は神社を出て歩き出した―――――。





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あきゅろす。
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