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短編
居酒屋ぱんだ〜兄編〜
短編

*弟とは別な店で働く『ぱんだ』兄の日常*

*女装
*筆責め
*甘い


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 大好きなのはチョコレート。

そう公言して憚らない彼の元には沢山のチョコが集まる。
その中でも一番大きな贈物は『チョコレートファウンテン』。上部から流れるトロトロに溶けたチョコレートを、苺やマシュマロに付けて食べる、あれだ。

そしてそれは、今やこの店の『名物』にもなっていた。




 滝のように流れ落ちるチョコレートに、そっと串をくぐす。
串の先に刺してあるのは丸い苺だ。
それを真剣な瞳で見詰めているのは、小柄な体躯の青年だった。
白と見紛うばかりのプラチナブロンドと、それに同化してしまいそうな程の白い肌。
ウェイター仕様のシャツとリボンタイはどうやらサイズがあっていないようで、今は汚れてしまわなようにだろう、袖が捲られて肘の辺りまでが露になっている。

「よし。」

声を上げ、慎重な動作で串を抜いた。
苺の赤が3分の1だけ見える完璧なコーティング。
それに満足そうに煌めいた瞳は、濃い青色だった。

「お待たせしました。」

言って、お客さんの前に置く。
ニコリと浮かべるあどけない笑顔は、ともするとショートカットの少女にも見えなくはない。

「や〜ん!ぱんだちゃん可愛い〜v」

カウンタに座っていた女性が声を上げて少年に抱き着いた。

「わ。」

「こらこら。ミカさん。そんなことして彼女がお怒りですよ。」

バーテンダーが苦笑してそう言うと、ミカと呼ばれた女性の奥に座っていた女性も同じように苦笑を浮かべた。

ここは同性を恋愛対象とする嗜好を持つ者が集うゲイバーだ。
だがその中でもこの店は男性女性問わずに同嗜好であれば性別は構わない、ゲイ&ビアンが混じり合う珍しいタイプのバーだった。

それを知っているからか。
女性の腕の中にいる青年も、慌てる様子も無くニコニコと笑い続けている。

「んー、でもあたしは確かにビアンだけど、ぱんだちゃんならイケそうな気もするんだよね。」

「そうね。今日のぱんだちゃんは特に可愛いものね。‥だけどどうしたの?その格好は。」

先の女性の言葉に同調しつつ、奥の女性の手が伸びた。
ヒラリと丈の長いシャツの裾を捲り上げる。

「わあっ!」

と、その下に見えたのは臀部の半分が見えるほどに短い、フリルたっぷりのスカート。

「ぱんだちゃん可愛い〜!!」

「わ、わ、」

顔を赤らめる青年の横で、

「なに。あれ、また『お仕置き』?」

「さあ。」

ちらりと流しられたバーテンダーは、苦笑だけで首を傾げた。

「あれ。ちょ、ぱんだちゃんひょっとして‥‥ノーパン?」

いつの間にか囲うようにしていた手がフリルの中をまさぐっている。

「違いますよぅ!穿いてます。」

「あ。ホントだ。紐パン‥。」

「わあぁ!!」

「はいはい。ストップ。」

エスカレートしようとするそれを止めたのはバーテンの声だ。

「ほらぱんだ。注文だよ。」

オーダー伝票を渡し逃がすように青年を追い払う。
だが、助け舟を出したのは果たして青年にか、それとも女性にか。

カウンタ奥に座る女性の額にくっきりと浮かび上がる青筋を、バーテンダーの目ははっきりと捉えていた。




「おお。ぱんだちゃんこっちこっち。」

「災難だったね。おお、怖い。」

カウンタ席の方を見遣った男性が言って身を震わせた。
この二人も常連だ。

「あ。ご注文でしたよね。」

「そうだな‥じゃあ俺達にもチョコフォンデュを。」

「はい。ありがとうございます。具は何にしますか?苺とバナナとマシュマロと‥」

「ぱんだちゃん。」

「はい‥‥え?」

「だから、『ぱんだちゃん』。」

オーダー表から目を上げるとそこには、真っ直ぐ指を青年に向けニコリと笑う男性の顔。


「‥‥あ‥はい‥」


答える青年の頬は再び赤らんでいた。




そっと指を潜らせて、抜く。
とろりとした感触を逃さないうちに運ぶ。

「あの、どうぞ。」

開けられた口の中に指を向けると、パクリと中へと誘われた。
チョコレートなんかよりも断然熱い感触。
ぬめる物体が指を包み込み吸い上げられたり、チロチロと指先を擽るように舐められたり。

「んっ。」

擽ったさに青年の身体が震えた。
と、

「あー、いいなー。」

もう一人の男性が呟いて、バーテンダーに向けて手を挙げた。

「俺もチョコフォンデュー。具は‥『コレ』ね。」

「はい。ありがとうございます。」

直ぐ様届けられたのは銀色のトレイ。

「サイズは?」

「うーん‥面平‥あ、線筆もいいな。」

「和筆もございますよ。」

悩んだ末に2本の筆を取り、それをたっぷりとチョコレートに浸した。

見れば青年は肘の辺りを舐められている。

「おいおい。んな所チョコついてたかよ?」

「おかわりしたんだよ。ねえぱんだちゃん。」

「は、はい。」

よほど擽ったいのか。
答える声が震えている。
震えているのは声だけではないようで、すらりと伸びた白い足も小刻みに震えていた。

「んー、じゃあ俺は‥こっち。」

呟いた男性の筆が触れたのは、膝。

「うんっ!」

ビクビクッ、と青年の身体が痙攣するように跳ねる。

「あ‥」

つぅ、と足を溶けたチョコレートが伝い落ちる感触。
だがそれと反するように、筆の感触は徐々に上がってきて、

「あっ!」

「わぉ。本当に『紐パン』。しかもTバックじゃなくてOバック。」

筆の穂先はシャツをめくり上げスカートの下へと入り込んだ。
内股、股関節、
そして微かに兆しを見せる膨らみを、何度も何度も撫ぜられる。

「ふ、ふぅ‥っ、」

「上手いでしょ。俺昔書道やってたんだよ?」

「おい。こっちも。」

そう言った男を見れば、青年の腕を片腕で抱え込み、もう片腕でシャツを托し上げていた。
ニヤ。
筆を持つ男性の口の端が上がる。

「O.Kー。」

持ち替えられた細筆が持ち上がり、

「うあっ!」

胸の中心に色付く点へと押し付けられた。
遂に青年の身体が崩れ落ちる。

「こっちの細筆はね、ちょっと固めでコシがあるでしょ。」

言いながら横に筆を引き、ベットリとチョコを塗りたくるように胸の粒を押し潰す。
もう片方には柔らかな和筆を当て、穂先がくるくると紅い粒の周りを滑らせた。

「んっ、んあ、ふぅっ!!」

甘い匂いが立ち込める。
とろとろと溶けたチョコレートが流れ落ちていく、それを2枚の舌が追い掛けていく。
チュプ、
ペチャ、
濡れた音。
膝下から舐め上げてくる舌と、胸から腹へと下りていく舌と。

「んう‥っ!」

「お臍感じるんだ。ぱんだちゃん。」

「フフ、」

クチュリ

臍の周りを廻っていた舌が、絡まった。

「あ‥」

腹の辺りで響く濡れた音に青年が視線を落とすと、そこにあったは絡まり合う舌と重なる唇。

チュク
チュプ

「ん、」

「‥ふぅ」

時折出来る唇と唇の隙間から声が漏れる。


「ぱんだちゃん。」


今度は頭上からした声に目を向ければ、カウンタに座っていた女性二人が寄り添っていた。

「ぱんだちゃん、さっきはごめんね。」

「このコには十分反省させるから。」

その台詞に一人の女性の頬が染まる。
それを愛しそうにもう一つの瞳が見詰めている。

「じゃあね。」

笑いながら、寄り添って去って行く背中。
腹の上ではやはりカップルが口付け合っている。


「‥‥っ」


クチュリ、チュク、音が耳に入る。


ボロリと涙が青い瞳から零れた。


「‥‥っく。」


なんで‥‥なんで俺だけ‥‥俺ばっか、ひとり‥‥‥


「ふぇ‥‥っく。」




伝った涙はチョコレートに溶けて、床へと滑り落ちた。








キイィ

軋んだ音を立てて扉が開く。

現れたのは黒い人影。
逆光を背負って立つその人が、上質な布地に包まれた腕を持ち上げた。

「ぱんだ。」

その声に、部屋の隅でうずくまっていた白金の頭がパッと上がった。
直ぐ様伸ばされたその腕に飛び込んで行く。

「オーナー!」

「フロアで突然泣き出したって?」

問い掛ける声は優しい。低くも高くもない声が、肩口に埋められた髪の毛をふわりと撫ぜていく。

「スカートが恥ずかしかった?」

「‥‥」

答える声はない。
代わり、というように、一目で上質と知れる布地に黒い染みが広がっていた。
それに苦笑混じりの溜息が響く。


「ぱーんだ。」

「‥‥‥‥」

「−−−寂しかった?」

「‥‥っく!」

まるで肯定するかのように嗚咽が響きはじめた。

「はは。そっか。」

大きな手の平が白金の髪の毛を繰り返し梳く。
室内から甘えるような泣き声だけが、暫く聞こえ続けていた。






「あれが『ぱんだの鳴き声』ですよ。」

バーテンダーがシェーカを振りつつそう告げる。

「甘いねぇ‥。」




チョコレートよりも甘い、甘い、『ぱんだの鳴き声』。

閉店の少し前時間にいらっしゃると、運が良ければお聞き頂けます。



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