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短編
居酒屋ぱんだ
短編

*居酒屋店員『ぱんだ』の日常*

*ぱんだ攻
*目隠し
*言葉責


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 表通りを一本入った所にある。
見た目はちょっと小洒落た居酒屋だ。
種類豊富なアルコールと、マスター自らが作る創作和食料理が自慢の店。食器にもこだわりがあるらしく量の割には値段が少々高め設定だが‥それでも客の入りは上々だ。
今も、簡単な作りで一席ずつに区切られたその殆どが埋まっていた。

その間を一人の青年が通り抜ける。

手には漆器の盆を持ち、紺色無地の作務衣姿。腰にはエプロン、額にはバンダナのように手ぬぐいがぐるりと巻いてある。そこから覗く髪の毛は白と見紛うばかりの極々薄いプラチナブロンドで、瞳もなんとも云えない不思議な色をしていた。
店員なのだろう−−が、その整った横顔には笑顔のかけらも見られない。
その表情のまま一席の前に立ち止まり、料理を置くが、その際にも「お待たせしました」とも「どうぞ」との一言も無くただ僅かばかりに頭を下げただけ。
だが出された客は憤慨するどころか、どこか陶然とした面持ちでそんな彼の横顔を見詰めている。


「おい、ぱんだ。」


厨房から声が掛かった。

「三十三番、ご指名だよ。」

ニヤけた口調で言われる。
その時になって初めて彼の彫像のようだった横顔が、僅かに歪んだ。





「失礼します。」


青年が−−各席の目隠しになっている−−笹竹をくぐると、中にいたスーツ姿の男性が弾かれたように顔を上げた。
その頬は既に酔っているのかほんのりと紅潮していて、瞳も心なしか潤んで見える。
少し色を抜いた真っ直ぐな前髪の下で、その瞳が喜色を顕にして煌めいていた。

それを一瞬だけ見詰めて−−逸らす。

「あ、あの!」

慌てたようにスーツの男性が声を上げた。

「あの本当にぱんだ君に来て貰えるなんて‥俺凄くラッキーっていうか‥あの、凄い嬉しい。」

聞いているのかいないのか。
そんな態度の青年は許可も求めぬままドカリとソファに腰を落とし、やや乱暴な仕種で手ぬぐいを外した。

「あ、あの、僕あの実は二回目なんだけど‥お、覚えてないかな?えと先月の」

「も、いい。」

「え?」

「もう」

長いリーチが伸びて肩を突き倒す。

男性の焦茶色の瞳の目前には、不思議な色が迫っていた。

「もうお喋りは終わりでいいでしょ。」


スーツの男性の、喉が鳴る。






「あっ、んあっ、あぅんっ!!」


茶色の髪の毛がバサバサと舞った。
それを掴んで押さえ付け、更に腰を突き入れる。
先刻まで座席だったそれは今はソファベッドになっていて、だがそのスプリングも耐え切れぬと言うように軋む悲鳴を上げている。

「イイっ!イイよぉ‥!」

押さえ付けられた男性が、目隠しをされた手ぬぐいの向こうで涙を流して叫ぶ。

「なにがイイんすか。」

青年はそう呟いて、突き入れる腰の動きを緩やかにした。

「やっ‥」

「こんな恥ずかしい恰好して、なにが『イイ』んすか?」

そう言われる男性の姿と云えば、シャツは一番上の釦を除いて全部外された状態だというのに、ネクタイはきちんと締められたまま。
下半身は足首までの靴下以外は一糸纏わぬ丸裸で、大きく広げられた脚の間からは、恥部どころか、青年をくわえ込んでいるその場所まではっきりと見えるくらいに晒されている。

「ああ。でも見えないですもんね。」

言って青年はフ、と口許に嘲るような笑みを浮かべた。
だがそれすらも目隠しをされた男性には解らない。
ただ頬に触れた微かな呼気に、そうと想像するだけだ。

「あれ?
なに、恥ずかしいって言われて感じちゃったんですか?」

ピン!と指先で立ち上がった中心を弾かれた。
男性の身体が跳ね上がる。

「違‥や‥」

「『や』じゃないでしょうが。」

思わず抵抗に伸びた手を、青年の手が振り払った。
ぐっと掴んまれた髪の毛を更に押込まれて、反動で顎が上がる。

その顎に歯を立てられて


「いいんでしょうが。‥‥‥こう、されると。」

「あああああっ!!」


再び始まった激しい抽挿に、男性の顎がガクガクと震える。
もはやガンガンと骨を打つ音すら聞こえそうな激しい突き上げに、男性は開きっぱなしの口腔から啜り泣くような悲鳴を上げるだけだ。

「はぅ!っは‥や、やぁ‥!」

男性の内股が小刻みに震え始める。

「なんですか。もうイクんすか?」

それを横目で確認した青年は、おもむろに揺れる足首を掴んで高く持ち上げた。

「くぁうぅ!!」

「つーか、これじゃどっちが『ぱんだ』か解んないっすよね。」

自らの目線よりも高い位置に掲げた白い脚と黒い靴下とのコントラストを眺め、それを揺らしながらえぐるように突き入れる。

「んくっ!んっ!駄目‥イク‥イクよぉ!」

「どうぞ。」

「いやぁ‥ぱ、ぱんだ君も一緒に‥」

「あー‥無理。」

ギシギシギシ
早いリズムを刻みながらも、青年の声には乱れの一つも無い。

「‥んなぁ‥やだ、ヤダよぉ‥っく、」

体内を擦り上げる青年自身はひどく熱いのに−−その声には僅かな熱さえ感じられなくて。

「‥やだ、あっ!‥あっふ、イッて‥イッてよっ、あっ、あっ!!」

ガクガクと揺すぶられながら弾けそうになる衝動を必死に堪え叫ぶ−−−と、

「うるさい。」

ぎゅう、と今にも弾けそうに震えるそこを掴まれた。
有り得ぬ衝撃に身体が痙攣する。
と、その拍子にか−−どれほど涙を流したせいか−−ぐっしょりと濡れた手ぬぐいが外れ落ちた。

「んなこと言って‥アンタ」

露になった半分ほどの視界に映ったのは−−−−声と同じ、まるで熱を感じぬ不思議な色の瞳と、

冷たい微笑。




「まじでイキ死んでも、知らねぇ。」








 顎に薄すらとした歯型を付けた男性が店を出て行ったのはもう空も白み始めた時間帯だった。

それを見送り、扉を閉める。

「おう。お疲れ。ぱんだ。」

「‥っす。」

カウンタの中から掛けられた声に無愛想に返した。
いつもそうではあるのだが、この時間帯の青年は殊の外無愛想だ。
疲れた帰りたい面倒臭い‥そんな怠惰な空気を彫刻のようなその肢体に纏わせる。

「‥‥‥‥それがまたセクシーだと評判なんだけどな。」

「あ?なんすか?」

「いーやーなんでもー」

だがそんな忠告をして態々客を減らすような真似はしない。
ここのマスターはそういう男だ。

「あ。そうだ。」

既に去りかけていた背中に告げる。

「今日の時給分時給当たり5%減俸ね。」

「なっ」

「最初と最後、お客様に敬語使うの忘れてたでしょう。「イキ死んでも知らねぇ」言葉としては恰好いいんだけどねぇ。店員としてはちょっと残念!」

まあそこが魅力的だとお客さんの評判なんだけれど‥‥だがそういうことは言わない。
ここのマスターはそういう男だ。

「あ。ついでに『CLOSE』の札出しといてな。」

「‥っす。」




「‥‥はあ、」


青年はうなだれる。
また目標が遠退いた、と。

クールな美貌とシニカルな態度、絶倫と鬼畜振りが評判な青年の目標。
それは病気の母をいい病院に入れてやり、同じ世界に生きている兄と二人で日の当たる生活に戻ることだったりする。

カラン

木製の札を裏返す。
墨で書かれた流麗な文字『CLOSE』。

それを親の敵を見るような瞳で見詰める彼の、

花壇には赤いチューリップを植えよう。

そう夢見ている心中は−−−−−−−−−−誰に知られることもない。


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あきゅろす。
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