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短編
キンキーな彼
短編

*サディストな彼氏に惚れられてしまった『僕』の受難*

*若干SM
*フェラ
*リング
*(気持ちは)相思相愛


−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−−


 僕の彼氏はキンキーだ。

あ。『キンキー』てのは、変質的性癖保有者て意味ね。この場合。
こんな言葉なんて普通は知らないよね。
僕だって、まあ性癖柄−−あ。僕はゲイです。−−言葉だけは何となく耳にしたことはあったけど実際にどんなものなのかなんてのは全然知らなかった。つーか知らなくて良かった。
多分ストレートな人ってのは『ゲイ』て聞くと、所謂オネエ系とか、若しくは某芸人さんみたいなハードゲイって奴を思い浮かべるのかもしれない。
でも実際はそんなことはなくて、殆どの人は至って普通。
真面目そうな人もいれば社交的な人もいるし、大人しいっぽい人だっていて、本当、普通なものなんだ。
そう思ってた。



彼に出会うまでは。



 彼とは、極々普通の場所で出会って口説かれた。

僕らみたいな性癖の人は、普通はゲイバーとかクラブとか、所謂そういう嗜好の人だけが集まる場所で相手を探す。
それが当たり前だと思っていた僕には、彼の存在は正直規格外だった。

いや。本当に『規格外』なんだよ。彼は。
僕の嗜好を知らないうちからアプローチしてきたこともそうだし、またそれを周囲に受け入れさせてしまう所もそうだ。
それになによりその強引さ。
何をもってしてその強引さ??と疑問を持つ隙さえ与えぬ熱烈なアプローチに次ぐアプローチ。
そしてそんな行動も許されてしまうような整った容姿。腰にズドンとくる低音美声。

−−−−これに落ちない人って、たぶんいないよ?

そんでもって例に漏れず落とされてしまった僕なのだったけれども−−−−−−−−彼の『規格外』はそれだけには留まらなかった。



彼は『S』な人だった。



あ。
今、「なんだ。変質的うんにゃら〜とか言っておいてただ『S』なだけ〜?」とか思ったでしょう。
違う。
彼はSはSでも超の付く『ドS』。
それも好きなものは虐めないと愛を伝えてる気持ちにならない。可愛いと思った動物は一律に虐め可愛がりたいし、好きだと思った奴には蚯蚓腫れを刻み付けて泣かせたい。Tシャツはだぼっと着るのが嫌いで必ず買うのはSサイズだし、なんと生まれは新潟の佐渡市という根っからの『サディスト』なんだよ!
‥‥まあ最後のは偏見だとして、でもTシャツ云々以前はまるきり本人談。

だけどそんな彼の性癖を知った時には、僕はもう彼を好きになってしまっていた。
流石に初めてのセックスで乳首にピアス開けられそうになったときは顔面蒼白になったけど、それでも好きな気持ちは止まらなかった。
彼は僕の泣き顔がとてもとてもツボらしい。
そこを好きになったんだって言われて‥‥‥‥本気泣きした。
色んな意味で。




 濡れた音がこだましている。

口の中は熱くて弾力のあるものでいっぱいで、呼吸の手段は鼻呼吸しかないのにそれも流れ出る涙のせいで上手く出来ない。
苦しくて。
苦しくて‥。

「ん‥ぅぐ、」

いきなり喉をつかれてえづきが込み上げた。

「こら。」

襟足の辺りを掴まれて引っ張られた。
反動で顎が上がる。

「気が逸れてる。ちゃんとしないといつまでも苦しいままだぞ。」

「んぅっ、」

強制的に見上げさせられたそこには、鋭い光で俺を見下ろす真っ黒い瞳。
ああ。でも少し潤んで、眉が下がっている。
これは気持ちいい表情だ。
実際、口の中の彼が硬度を増した気がした。
俺のえづきを愉しむように、喉奥を緩やかに突き上げてくる。

「んぐぅ」

「そう。ほら。ちゃんと舌を使って。何度も教えただろう?『歯を立てるな・唇締めろ・舌を使え・奥までくわえろ・時折吸い上げるように』‥っ、そう。」

彼が満足そうな溜息を漏らした。
褒めるように大きな手が襟足から背中の方までを撫でて行く。
あ。でもそんな風にされると‥‥

「っくぅ‥!」

思った時には痛みが走っていた。
本来男なら一番気持ちいい筈の場所。でもそこには今は彼の手ずから銀色のコックリングが嵌められていて、快感を覚える度に締め付けられて痛みが走る。
因みに彼をイかせるまで外してもらえない約束だ。
本当は直ぐにでも外してしまいたいところだけれど、僕の両腕は腰の後ろで一纏めに括られていて自分では解けない。
つまり、僕に出来るのは泣きながら頭を振り舌を使って彼を高みに昇らせる、それだけってことで。


パン!


「ふうぅっ!!」

「もじもじしない。」

お尻を叩かれた。
無意識に腰が揺れていたらしい。
痛い。
叩かれたところがジンジンとする。
やだ。もう‥
‥苦しいよ‥
ポロポロと涙が頬を滑り落ちた。

「こら。誰が休んでいいって言った?」

「‥えあ、無理ぃ‥も‥無理だも」

耐え切れず口を離してしまった僕に、彼の真黒い瞳がスウと細められた。

「そう。‥‥‥別に俺はよいよ。」

「あっ!」

言いながら、延ばされた彼の手が俺の先端を擦るようにした。

「ふ!あ!」

そのまま滑ってリングの周りをくるくると撫ぜられる。

「俺は俺の好きにするからね。
なんならこのまま入れちゃうか。入れてバコバコ腰振り立てて、奥に熱いのぶちまけてやる。お前の一番感じる所にカリ当てて無茶苦茶に突き上げて。それとも浅いとこ掻き回すのとどっちがいいかな?‥‥ああ。その前に」

指が更に奥へと潜り込んだ。

「ここ、舐めてグチュグチュにしないとな。」

「くああああっ!!」

「好きだろう?いっつもされると感じ過ぎて泣き出しちゃうもんな。」

「ひぃ、ああ!っあ!くぁぁっ‥」

クスクス
彼の薄い唇がひどく酷薄そうな笑みを描いて笑う。
長い指が潜り込んで浅い所を掻き交ぜる。
先刻彼が言っていた通り、そうされると僕は弱くて。

腰がガクガクとする。

痛い。
痛い。
痛い。
痛みに萎える筈なのに、そんな隙さえなく与えられる快感に、そこは締め付けられながらも涙を零す。
痛いよぉ。
痛いのに気持ちいくて。
気持ちいいのに痛いくて。
やだ。
ヤダ。
わかんなくなる。苦しい?辛い?気持ちいい?









「‥‥‥可愛い。」



呟きが聞こえた気がした、次の瞬間。
目の前に突き付けられた赤黒いものから、熱い液体が降り注いだ。
叩き付けられる飛沫。
どろりとした感触。
馬鹿みたいに開きっぱなしになっていた口に物慣れた苦い味が広がって行く。


「ふう。」


自らの手で最後の一滴までも僕の顔面上に搾り出した彼は、出し切ったそれを僕の唇になすりつけながら、ひどく満足そうに息を吐いた。

「凄く、良かった。
泣き顔可愛い過ぎ。反則。」

そう言う彼の瞳は、言葉通り、凄く優しい色をしていた。
先刻まで僕を苛んでいた意地悪な指が、まるで繊細な飴細工を触るような動きで僕の頬を撫ぜる。

そんな‥風にされるちゃうと‥‥‥
胸がギュウゥ、と締め付けられるみたいになる。
やっぱり、好きだ。
そう思ってしまう。
どんなに酷いことされたって、意地悪されたって、嫌いになんかなれない。
大好き。
大好きだよ。
胸がキュウ、キュウと甘切ない痛みで軋む。
と同時、リングに締め付けられたままのそこもギュウゥとなって痛みを発して−−−−−−−縋るように見上げてみる。
あるのは見詰め返してくる優しい黒色の瞳。




「駄目。」

「ええ゛ぇ!!?」

「当たり前だろ。『俺をイかせられたら‥』て約束だったろうが。」

むにっ、と唇を摘まれる。

「それに零さず飲み込めなかっただろう。その分ペナルティだな。」

「っっ!!!!!!」


涙・・・・・出てくる。


「お。可愛い顔だな。凄いそそる。」


その言葉通り。彼のそこは既に力を持ち始めておられました‥。
摘まれたままの唇の内側に擦り付けられて、扱かれる。

「唇締めて‥そう。イイコ。今度はこれも入れてあげような。」

そう言って彼が取り出したのは、真っ黒いグロテスクな形をしたバイブレーション。

「!!!!!?」

「おっと。口を離したら更にペナルティ追加だからな。」



はい。
マジ泣き入りましたーー。




それに本当に愉しそうに笑う彼のなんたるキンキーぶりか。




だけどそんな彼にギュッ、て胸が締め付けられてしまう僕ってのも‥‥‥実は結構終わってるのかもしれない。



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