小説
俺の自慢
豪邸かっ!
そう思わせる学校内はまさに、どこかの金持ちのお嬢様の邸宅の、それだった。
「教室が・・・キラキラしてらぁ・・・」
俺が始めてみる学び舎の構造に目を輝かせていると、兄貴がそんな俺とは対照的に、冷静に俺の次にするべき行動を促してくる。
「まずは・・・ここの理事長に挨拶だ」
――兄貴はすごい。
本当にここの生徒なんだ。
俺たちは別に金持ちでもなければ、芸能人でもない。
親父が理事長と知り合いだとか、金持ちと知り合いだとか、そういうのもまったくない。
兄貴は、確実な、自分の頭のよさだけでここに合格した。
しかも、トップで。
この学校の偏差値が低いわけではない、むしろ高すぎるくらいだ。
それを、幾多の英才教育を受けてきているようなお嬢様&お坊ちゃまと同等に、いや、それよりも勝る知識と学力で兄貴はトップに立ったのだ。
俺は、兄貴にどう頑張っても勝てない。
その事実に俺は、もう絶望すら感じていない。
すがすがしいくらいに俺の上に立っている兄貴が、まぶしくて、俺は心から尊敬している。
いつか、兄貴みたいに・・・という尊敬ではなく、
いつまでも、俺の自慢でいて欲しいという尊敬だ。
でも、自慢できないのがつらい現状ではあると思う。
違いすぎるオレタチが兄弟だということは、苗字が同じというだけでは誰も気づかない。
そのことを疑わない。
言っても信じない。
兄貴は兄貴。俺は俺で成り立ってる。
オレタチは兄弟でも、兄弟として認められていない。
俺は今ではそれでもいいと思ってる。
その真実を知ったところで、俺が跳躍的に人気になるわけでもない。
なにも変わらないのであれば、それはきっと意味のないことだ。
俺の“自慢”は、静かに俺の胸だけにしまっておこうと・・・。
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