小説
プロローグ
――俺の頭がいいといったら、そうでもない。
あの学校に入れたのだってあの学校で、年間の成績全てがトップだった兄貴の推薦だ。
兄貴は俺を買いかぶりすぎている。
“お前にならできるさ、なんたって、俺の可愛い弟だからな!”
――勘弁してくれ。
俺はあんたとは違うんだ・・・いくら弟でも、東大親父のDNAをまるっきり継げてねぇんだから・・・。
「治樹、どうした?考え事か?」
兄貴は頭だけじゃなく顔もいい。きっと、いや、絶対モテモテなんだろうな。
「・・・・・・いや」
「そうか。入学初日からそんな面すんな。治樹はいつも笑顔でいたほうが可愛いんだから」
兄貴は男でも惚れそうな、そんな笑みを浮かべながら、普通の一般家庭のお兄様方が絶対に言わないようなことを言った。
――まぁ、いつものことだ。
「あぁ。わりぃ、兄貴」
そう満面の笑みのつもりで言うと、兄貴は“うん。可愛い”といって、俺の手を引いた。
――いや・・・おかしいだろ・・・・。
「その恥ずかしがりながら笑うお前、可愛いすぎる」
――なんのこっちゃ・・・。
「いくぞ!!」
兄貴と一緒に中学1年以来の登校。
別に遅刻ギリギリでもないのに、俺の手を一切離さず全力で走ってデンジャラス登校だ。
兄貴曰く、“歩いてなんか登校したら、お前に変な虫がつくから”
“変な虫”ってなんだよ・・・
――やっぱり兄貴は俺を買いかぶりすぎなんだ。俺が女なんかにモテるわけないだろ。
「女だけじゃないから、言ってるんだ!」
「・・・・・・はぁ!?」
一瞬俺は、兄貴の言っている意味が解らなかった。
――“女だけじゃない”!?んな、ばかな!!・・・・兄貴ならまだしも・・・。
「・・・お前は・・・自分の可愛さをわかってない・・・」
「なにいってんだ!」
――そんな真剣な目で見んな!!
「ま、俺が追っ払ってやるから安心しろ!!」
――勝手にいってろ・・・・。
兄貴の言ってることはときどき意味がよくわからない。
ほんとに、頭がいいんだか、悪いんだか・・・・・。
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