dream
赦しを貴方に/ミキティドリ(僕は君への〜続き)
お願いです。
どうか
一人で苦しまないで下さい。
【〜赦しを貴方に〜】
放課後の教室。
何時もは4人で騒いでる筈なのに、今日は葵の姿が見えない。
よっちゃんとごっちんは今度の日曜日にデートらしく、その予定を立てていてそのことに気付いていないみたいだった。
「美貴、葵のこと探してくるね。」
聞いてんだか聞いてないんだか、生返事する2人を一瞬睨みつけて美貴は教室を出た。
葵はずっと苦しんでいるのに。
微塵も気付かず、目の前でイチャつくバカップルに腹が立つ。
葵が一人になる時は、いつも来るのは屋上と決っている。
少し錆び付いた鉄の扉を押して屋上へと出た。
見れば、正面のフェンスに力無く凭れかかる葵の姿があった。
此方に背を向けて、空を見上げる葵。
その背中は何時もの頼り甲斐のある背とは掛け離れてた。
「誰か・・・・っ」
驚いた。
いつだって気丈に振る舞ってる葵の声が震えてる。
ごっちんへの想いを、罪だと決め付けてーーー。
「葵・・・。」
「・・・美貴?」
そっと振り返った葵の頬には、初めて見る彼女の涙があった。
「・・・美貴は、気付いてるんだろ?」
「ん・・・何となくだったけど、ね。」
「鋭いからなぁ、美貴は。」
からからと笑う葵。
その表情が、美貴には何処か痛々しく見えた。
「しゃーないよな。俺の方が出逢うの遅かったんだし。」
「うん・・・。」
「ひとみと似合いのカップルだしさ・・・でも、さ。」
「葵・・・?」
「はは。想ってたいんだよ、ごっちんのこと。ずっと、好きでいたい。」
赦されないけれど。
そう言って、葵はもう一度空を見上げた。
耐えらんないよ、葵。
そんな貴方を見ていることしか出来ないなんて。
「み、き・・・?」
「お願いだから・・・それを罪だなんて言わないでよ・・・・。」
葵の背中にそっと抱き着いて、その背に顔を埋める。
じんわりと、額に葵の体温が伝わってくる。
「葵がごっちんを想ってることが罪だって言うなら、美貴がそれを赦すから。」
「美貴が、ごっちんの代わりにその罪を赦すからっ・・・!!」
「貴方の罪が軽くなるなら、美貴に葵を支えさせてよ・・・。」
「美貴・・・。」
「お願い・・・一人でそんな顔しないで・・・・。」
何時の間にか美貴も泣いてた。
でも、葵の方が泣きたい筈だから。
ぐっと嗚咽を抑えてたら葵の腹に回してた美貴の腕にそっと手が添えられた。
「さんきゅーな、美貴。」
「・・・ううん。」
「・・・・美貴が俺の罪を赦してくれる?」
「うん。ただの、気休めにしかならないかもだけど。」
「そんなこと無いよ。美貴に赦してもらえるなら俺、救われる。」
振り返った葵が美貴を抱き締めた。
「俺は、ごっちんのこと好きでいたい。まだ。暫くは。」
「うん・・・。」
「でも、美貴が赦してくれるなら」
「ん・・・。」
「俺が美貴だけを想えるまで、待っててくれる・・・?」
「・・・うん、待ってる。」
言ったでしょ?
葵の罪は美貴が赦すって。
待ってるよ、美貴を想ってくれるまで。
「愛してるよ。」
雲の切れ間から差した温かさが、心に染みた気がした。
Fin.
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