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― あやり ―
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ビースト国の王都、ダリィスは世界一の商業都といっても過言ではない。

王城を中央に四方にのびた大路は海や国の端々まで続き、その利便性のためか、世界各国からさまざまな人々が訪れた。

それが、ダリィスを世界一の商業都にさせた所以だろう。



そんなダリィスの町を一望できる場所にその一室はあった。

繊細な彫刻がなされた柱。

華美な装飾がほどこされた調度。

壁にある本棚や壁にかかった絵画、そのすべてが厳かな雰囲気をかもしだしている。

その場所でひとりペンをはしらせている人物がいた。
『太陽の光』と例えられる金の髪にサファイアの宝石のような瞳。
その容貌も10人が10人認める整った顔立ち。
眉目秀麗という言葉はまさに彼のために存在するのだろう。

そう、彼こそビースト国第201代国王、ヨル・ダリィスである。

ヨルが王に就いたのは今から10年前、16の時だった。
そのときから現在に至るまで彼は賢王として世界中に名を轟かせていた。

ヨルが賢王である所以は自分の地位をよく理解していることにある。
ヨルは幼きころから思慮分別があった。
そのため、愚王とはいかなるものかを幼きころから考察しつづけた。

その結果、ヨルは『王』とはその地位を誇示することなく、臣下や民の声をよく聴き、自ら考えて自ら行動すること、と至ったのだ。

ヨルは王の座についてからすぐに自分が考える『王』を実践した。

臣下の信頼を得るために真面目に仕事に取り組み、
兵たちの声を聴くために剣術の稽古に参加した。

民と接するために神殿の祈りの場に足を向け、
地方で問題が起れば自ら赴いた。

そうしたヨルの努力により、臣下や民は『王』が目に見えて、雲の上の人ではないことを、知ったのだ。



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あきゅろす。
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