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― あやり ―
記念小説4


その夜、クロさんとシロちゃんにその話をしたら、なぜだか2頭ともに納得された。

『あぁ、だから人間の王が不機嫌になっているのだな。』
『ふぇ?』
『気づいていないの?今日の王さまはイライラしているよ。』

そうかな?
いつもと同じように思えるけれど。

なんて首をかしげていれば、

『あやりが気づかないのも当然かな。王さまもさすがにあやりを前にイライラするはずないもんね。』

とシロちゃん。

え?それって動物セラピー的な意味で?

確かに猫は癒されるよねー。
おれも飼い猫には随分癒されたもん!

たとえ疲れて帰ってきても猫の幸せそうな寝顔をみれば、疲れも吹っ飛んじゃうんだよね!

へーかも日々の業務でお疲れみたいだし、
やっぱりへーかもこの自慢のふさふさの毛で癒されているんでしょ!

『あやり、愚かなこと考えていないか?』
『ふえ?そんなことないよ!』

否定したのに、クロさん!
そんな呆れた視線でみないで!

クロさんにはなんか完全に思考が読まれている気がするぉ。

『それにしても案外、王さまも独占欲が強いよね。まぁ、王さまはなぜイライラしているのか理解していないんだろうけどさ。』

もし、イライラが本当ならば、
へーかの大切な茶会をぶち壊してしまったことが原因だよね。

ほんと申し訳ないぉ…。

『……あやりも相当鈍いよね。』

『ふえ?』

なんのこと?

そう問うとなぜか、シロちゃんにかわいそうなものを見る目で見られてしまった。

うぅ…。

『…そ、それより、どうしておれ、求愛なんてされたんだろう…。確かに動物に好かれる体質だけど、今までこんなことなかったよ?』
『あやりは体中から獣に好かれるフェロモンが出ているからな。』

フェロモン!?

『それを雄猫は雌猫のフェロモンだと勘違いしただけだのことだろう。』

クロさん待って!
そんなあっさり重要なことを告げないで!
てか、そんなフェロモンいつの間にでていたの!?

『もしかして、おれが異常に動物に好かれる理由って…そのあやしいフェロモンが原因?』
『…気づいていなかったのか?』

クロさんに逆に驚かれた。

なぜ…?

『じゃ、じゃあクロさんとシロちゃんも…』
『我らには理性がある。本能が強い動物とはちがう。』

そうなんだ…。
ホッと安堵した。

だって、クロさんとシロちゃんがおれと一緒にいてくれる理由がフェロモンむんむんだからなんて悲しすぎるもん。

『あやり、安心している場合ではない。』
『ふえ?』
『このフェロモンは…』

クロさんが何かを言おうとしたときだ、カチャリと音がして、寝室の扉が開かれた。
どうやら、へーかがお風呂からあがってきたみたい。

わぁい。
へーかだぁ!

たとえ話の途中だろうともへーかをみるとつい駆け寄ってしまうのはもう習慣みたいなもので、

へーかは走ってきたおれをひょいと、片手で抱き上げた。

へーか、へーか!

ごろごろ喉をならして、すりすりすり寄る。
相変らずへーからからはいい匂いがする。

この匂いをかぐと体がふにゃっとしちゃうんだぉ。

クロさんたちから呆れた視線を感じるけれど、仕方ないじゃん!
だっておれ、へーか大好きなんだもんっ!

「もう寝るか?」

へーかの優しい問いかけに『にゃあ(うん)』と答える。

へーかはその答えがわかったのか、ベッドまで連れてきてくれた。

そのあと、おれはへーかにたっぷり撫でてもらってごろごろ甘えて…
クロさんが何かを言おうとしていたことなんてすっかり忘れて眠ってしまったんだ。



だから、

『フェロモンは好意を寄せる者がいればいっそう強まるのだが…』
『…あやり、王さまといるとき、フェロモンが強烈になっていることに気づいていないだろうね。ちゃんと僕たちが守ってあげないと。』

クロさんとシロちゃんがそんな会話を交わしていたことをおれは知らずにいた。


END

***


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あきゅろす。
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