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― あやり ―
記念小説2

どうやら、へーかのお茶会の相手は複数のようです。

腹ぼて男が着ていたような煌びやかな服を着た男性が3名、うち1人はご老人でぇ、あとドレスをきた年配の女性が2人。

話の内容も商いがどうのこうのって話だから、貴族で間違いないと思われる。

だから茶会といっても、くだけたものではなく正式な茶会なんじゃないかなぁ。

…にもかかわらずへーかの膝の上にいるおれ。

クロさんとシロちゃんはさすがに連れてきていないにしても、大事な会に、猫がいていいものかな?

なんて疑問に思っていれば、へーかの目の前に座る女性の膝の上にも猫ちゃんがいらっしゃった。

あっちの世界で言うロシアンブルーみたいな毛並の揃ったきれいな猫ちゃん。

性別はたぶん雄猫かな?
首には品がいいサファイアみたいな宝石が飾られている。

毛並といい、高級な首輪といい、この猫ちゃんはきっと飼い主さんにかわいがられているんだろうなぁ。

まぁ、毛並に関してはおれも負けてないけどね!

えっへん。


おれ以外の猫ちゃんもいることだし、この場所にいてなんの問題もなさそうだぉ。
だから、安心してお昼寝でもしようかな。

なんて思いながら居心地のよい体勢を確保していると、あちらの猫ちゃんがおれをじぃと見つめていることに気が付いた。

…なんだろ?


「陛下が珍しい猫を飼い始めたと噂になっておりましたが、」

口元にハンカチ―フをあて、しゃべりはじめたのは猫ちゃんのご主人さま。

いつの間にか雑談タイムに突入?

「陛下の膝に座っていらっしゃる猫ちゃんがその噂の猫ちゃんかしら。」

「誠に美しい毛色の猫じゃな!賢王と名高い陛下にぴったりじゃ。」

そういってフォフォフォと笑うご老人。
時々おれに優しい目を向けてくれていたので、この人は猫好きなのかな?

て、てか
おれ、ほめられちゃったぁ!
へーかとお似合いだって!

えへへ。
嬉しいなぁ。

「陛下が猫を飼い始めたとなれば、みなこぞって猫を飼いはじめることだろうのぅ。」
「これからは長毛種がはやりそうですわ。」
「さすがに白銀の毛色の猫はみつからないでしょうが。」

さすが一国の王様だぉ!
流行りを左右するほどへーかの影響はすさまじいんだ!

どうせなら、へーかを見習って動物含めた獣を大切にしてほしいんだけどなぁ。
一時の流行りとかじゃなくてさ!

「んまぁ、このこったら、ずっと陛下の猫ちゃんをみつめているわ。美しい猫ちゃんに心を奪われているのかしら。」

コロコロ笑う猫ちゃんのご主人さま。
その言葉が冗談だってのはわかるんだけど…

冗談になってないです。

まだじぃとみつめられているんですよ…。

そ、そんなみつめられても困るというか…。
おれ、何かした??


も、もしかして、その子もおれも雄だし、
喧嘩売られているとか??

お、おれ喧嘩なんてできないんだからねっ!
おれ、よわっちぃんだから!

ちょっとびくびくしながら猫ちゃんをうかがっていると、ふいに、猫ちゃんが御主人さまの膝の上からおりて、へーかの足元までやってきた。

へーかたちはまた、難しい話をはじめたらしく、それに気がついた様子はない。


下からじぃとブルーの瞳にみつめられる。
先ほどよりだいぶ近い距離で。

な、なに?

なんだか緊張してしっぽをぱたぱたせわしなく動かしてしまう。

そうしていれば、
猫ちゃんがおれに近づいてきてふんふんふんと匂いをかいだ。

そのかがれた場所がちょうど、お尻だったわけで…

『ふにゃあ!』

思わず声をあげてしまった。


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